駅のポスターで写真を無断で使われたとして、東武鉄道と同社子会社の東武ステーションサービス(東武SS)に損害賠償などを求めた民事訴訟で、原告・被告の双方とも控訴しなかったことが3月6日までに分かった。東武SSに対し合計50万円の支払いを命じた判決が確定した。
原告の男性は2月26日、取材に対し「(判決に)納得できる部分と納得できない部分があるが、大きな成果を得られた。一定の名誉回復はできたのかなと思う」と述べて控訴しない考えを明らかにし、「著作権は想像以上に身近な問題だと捉え、企業内の研修等にもっと力を入れてほしいと思う」と話した。
東武鉄道の広報部は2月28日、取材に対し同社と東武SSが控訴しなかったことを明らかに。判決内容に対する考えや控訴しなかった理由は「回答を控える」とした。駅や列車内のポスター、プレスリリースなどでの著作物・知的財産の取り扱いについては「社内教育等により再発防止に努める」と回答したが、具体策には触れなかった。
判決文などによると、男性は東武線の列車を撮影し、編成全体を真横から見たように加工した写真をネット上に公開。東武鉄道から駅業務を受託している東武SSの従業員で東上線の駅員が、この写真を加工してポスターを作成した。ポスターは男性からの使用許可を受けないまま、東上線の駅に掲出された。
男性は2021年3月、東武鉄道と東武SSが著作権を侵害したとして、さいたま地裁に提訴。同地裁の倉沢守春裁判長は今年2023年2月8日の判決で、男性が著作権侵害を主張していた写真7点のうち6点で著作権の侵害があり、東武SSに注意義務違反があったと認定した。東武鉄道の責任は認めなかった。
男性は裁判で写真使用料105万円と慰謝料20万円の合計125万円を請求。判決では写真使用料を30万円に減額した一方で慰謝料は請求額通り20万円とし、東武SSに対し合計50万円を支払うよう命じた。
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