東武が駅ポスターで無断使用の画像「著作物ではない」裁判で主張、棄却求める



ネット上の画像を無断で駅のポスターで使用したとして、画像を作成した埼玉県春日部市在住の男性が東武鉄道などを相手取り、経緯の説明や使用料の支払いなどを求めて民事訴訟を起こしていたことが分かった。さいたま地方裁判所で11月9日に口頭弁論が開かれ、審理が終了した。

東武鬼怒川線を走るSL列車「SL大樹」。【撮影:草町義和】

原告の男性は鉄道車両を横から撮影した動画を加工し、車両の写真をつなげて列車の編成にした画像を作成。自身が管理するウェブサイトで公開している。訴状などによると、東武東上線の駅員が男性のウェブサイトで公開されていた画像を使用してポスターを作成。ポスターは男性からの許可を受けないまま、2020年8月上旬から東上線の駅で掲出された。男性は同年10月29日に画像の使用に気づき東武側に連絡。東武側は翌日ポスターを撤去した。

東武側は2020年11月、画像を加工して3種類のポスターで使用したと男性に説明。これに対して男性は東武側から説明がなかった2種類のポスターを提示して経緯の説明を求めたが、東武側が説明を拒否したなどとして2021年3月17日に提訴した。東武鉄道と同社から駅業務を受託している東武ステーションサービス(東武SS)に対し、著作権を侵害したとして経緯の説明とウェブサイトでの謝罪文の掲示、画像の使用料・慰謝料として合計140万円の支払いを求めた。

ポスターで使われた画像は東武鉄道のSL列車「SL大樹」など計7点。このうち1点はJRの寝台特急「北斗星」の編成画像からDD51形ディーゼル機関車の車体を装飾する「星印」のマークを切り抜き、DE10形ディーゼル機関車の画像に貼り付けていた。男性は当初8点の無断使用を主張していたが、のちに一部は無断使用を立証できなかったとして7点に変更した。

東武東上線の北池袋駅。【撮影:草町義和】

被告の東武側は裁判で請求を棄却するよう主張。「画像は車両を横から写したものであり、星印は比較的単純な図形であるから、ありふれた表現であり、思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず、著作物性は認められない」とし、男性が作成した画像は著作物ではないと主張した。

ポスターについては「当該従業員らが自ら発案し、休日等の業務時間外に自宅等の職場外で作成したものを、東武SSが東武鉄道から委託を受けて運営する駅の所属長らが自発的に立ち上げた連絡組織である駅現業連絡会で掲示することを決定したのであり、職務上作成した著作物ではなく東武SSが著作者となることもない」と主張。会社として制作したものではないとしている。

男性は口頭弁論後の取材に対し「相手方のコンプライアンスやガバナンスなどに対する姿勢がよく分かった。どのような判決になるかは分からないが、今後の企業運営の再構築や変革のきっかけになればと思う」と話した。

東武鉄道の広報部は文書での取材に対し、裁判については「現在訴訟中で、相手方のある案件であるため答えられない」と回答。ポスターを作成した駅員の詳細についても「個人のプライバシーにかかわるため答えられない」とした。

判決は来年2023年2月8日の予定。

「著作物性」争った鉄道会社、最近も

著作権法は「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(第2条)を著作物と定義。著作物を複製したり加工したりする権利は作成した者(著作者)にあり、他者が作成した著作物を使用する場合は原則として著作者から許可を受ける必要がある。逆に創作的に表現したものでなければ著作権法上は著作物ではなく、許可を受ける必要がない。

このほか、著作物の一部を引用(第32条)したり、時事の事件を報道するため利用(第41条)したりするなど、一定の条件下では著作者の許可が不要な場合もある。ただし著作物を無断で使用できるケースでは多くの場合、出所を明示する義務(第48条)が課せられている。

つくばエクスプレス(写真)を運営する首都圏新都市鉄道と中日新聞社の裁判でも新聞記事の著作物性が争点の一つになった。【撮影:草町義和】

つくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道は、数百人の従業員がアクセスできる社内ネットに発行元の許可を受けず新聞記事を転載。中日新聞社が2020年2月に損害賠償を求め提訴した。首都圏新都市鉄道は裁判で「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は(略)著作物に該当しない」(第10条)を根拠に、社内ネットに転載した新聞記事の多くは著作物性がないと主張した。

東京地方裁判所は2022年10月の判決で「読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなどされており、表現上の工夫がされている」とし、新聞記事が著作物であると認定。首都圏新都市鉄道に対し賠償を命じた。今回の東武鉄道の裁判でも画像の著作物性の有無がどう判断されるか注目される。

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