真横の編成画像「創作的に表現した著作物」東武に賠償命じる判決 さいたま地裁



作成した画像を駅のポスターで無断使用されたとして、埼玉県春日部市の男性が東武鉄道と東武線の駅業務を受託している東武ステーションサービス(東武SS)に対し画像の使用料や慰謝料などを求めた訴訟の判決で、さいたま地方裁判所(倉澤守春裁判長)は2月8日、東武SSに対し合計50万円の支払いを命じた。

東武東上線の駅ポスターで無断使用された「真横編成画像」の一部。背景の状態から真横で撮影された部分のみ細かく切り出してつなぎ合わせ、全体が真横になるよう制作したことが分かる。【画像:原告男性】

原告の男性は東武鉄道の列車を動画で真横から撮影。この動画を加工して列車編成の全体を真横から見た静止画像を作成し、ネット上で公開した。東武SSの従業員で東武東上線の駅員が、この画像を使ってポスターを作成。男性の許可を受けずに東上線の駅に掲出した。

男性は著作権を侵害されたとし、画像使用料・慰謝料の合計125万円や無断使用に至る経緯の説明などを求めて提訴。これに対して被告の東武鉄道・東武SSは「写真は車両を横から写したありふれた表現で著作物性はない」「ポスターは駅員らが業務時間外に職場外で作成したもので職務上作成したものではなく、東武鉄道・東武SSはポスターの著作者ではない」などとして棄却を求めた。

東武特急スペーシアの「真横編成画像」の全体。【画像:原告男性】

判決は「自らの撮影意図に応じて構図や撮影角度、被写体と光線との関係等のほか、動画撮影した被写体のコマを複数重ねることによって加工して一つの写真を制作している」などとし、男性が制作した画像は思想や感情を創作的に表現した写真の著作物と認定。ポスターでは車両の窓枠にボカシを入れるなどの加工が施されており、著作権のうち翻案権の侵害があったとした。

その一方、駅員が東武鉄道の子会社である東武SSの従業員で、東武鉄道の責任は否定。ポスターには東武SSの名称が記入されていなかったことから、東武SSの名義で公表されたものではないとした。ただし東武SSにはポスター掲出前に写真の入手元を確認するなどの注意義務があり、この確認を怠った東武SSが翻案権侵害の不法行為上の責任を負うべきものとし、画像の使用料30万円と慰謝料20万円、合計50万円の支払いを命じた。

※追記(2023年2月8日23時53分):誤記などを一部修正しました。

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