西九州新幹線が開業 最短・最西端、全線整備めど立たず「見切り発車」



福岡市と長崎市を結ぶ九州新幹線(長崎ルート・西九州ルート)のうち武雄温泉(佐賀県武雄市)~長崎がJR九州の「西九州新幹線」として9月23日に開業。新型車両「N700S」が導入され、列車名「かもめ」として運行が始まった。整備新幹線の開業は北海道新幹線・新青森~新函館北斗以来6年半ぶり。

武雄温泉駅に入線する西九州新幹線のN700S「かもめ」。【撮影:草町義和】

初日の9月23日は各駅で記念式典などや開業記念イベントが行われた。入場券を買ってホームで列車を見物したり撮影したりする地元住民も多かった。

JR九州によると、同日15時までに長崎駅か武雄温泉駅に到着した列車(合計25本)の利用者数は8052人で乗車率は82%。このうち下り一番列車の「かもめ1号」(武雄温泉7時03分発)は483人で乗車率が123%、上り一番列車の「かもめ2号」(長崎6時17分発)は415人、乗車率106%でいずれも定員を超えた。

西九州新幹線は全長66.0km(営業キロは69.6km)で新幹線の営業路線のなかでは最も短い。武雄温泉・嬉野温泉・新大村・諫早・長崎の5駅を設置。このうち長崎駅は新幹線の駅としては最も西に位置する。最高速度は260km/hで、武雄温泉~長崎の所要時間は嬉野温泉駅を通過する速達タイプが最短23分。各駅に停車する列車は30分前後になる。

西九州新幹線の嬉野温泉駅。【撮影:草町義和】
嬉野温泉駅で発車を待つ長崎行き(左)と通過する武雄温泉行き(右)。【撮影:草町義和】
西九州新幹線の新大村駅。【撮影:草町義和】

長崎ルートは博多~新鳥栖が九州新幹線(鹿児島ルート)との共用区間とされ、新鳥栖~武雄温泉は未開業のまま。このため武雄温泉駅では博多~武雄温泉を結ぶ在来線特急「リレーかもめ」などと連絡。同じホームで乗り換えできる「対面乗換方式」を採用して3分ほどで乗り換えできるようにした。乗換を含む博多~長崎の所要時間は最短1時間20分。従来の在来線特急「かもめ」より40分ほど短縮された。

武雄温泉駅は在来線特急(左)と新幹線(右)を同じホームで乗り換えできる対面乗換を採用。【撮影:草町義和】

当初は在来線と新幹線を直通できる軌間可変車両(フリーゲージトレイン=FGT)を導入して博多~長崎の直通運転を行う計画だった。しかしFGTの耐久試験で車軸の摩耗などの不具合が発生。コストも通常の車両より高いことからFGTの導入が断念され、国やJR九州、長崎県は武雄温泉~長崎と同じフル規格新幹線での整備方針に転換した。

新幹線駅としては最西端の長崎駅。大勢の人が「かもめ」にカメラを向けていた。【撮影:草町義和】

しかしFGTを導入するという当初の合意と違うとして佐賀県が反発。博多~佐賀の所要時間の短縮効果が小さい割に建設費が高いこともあり、同県はフル規格での整備に同意していない。今回の末端側の一部開業は全線の整備方式が決まらないなかでの「見切り発車」となった。

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