西九州新幹線と同時デビュー「ふたつ星4047」試乗 干満差「日本一」の海を楽しむ



JR九州は9月21日、西九州エリアの佐賀県と長崎県を結ぶ新しい観光列車「ふたつ星4047」の報道関係者向け試乗会を行った。西九州新幹線の開業と同じ9月23日、営業運転が始まる。

9月23日から営業運転が始まる「ふたつ星4047」。【撮影:草町義和】

試乗会は午前発・武雄温泉→長崎(長崎本線経由)と午後発・長崎→武雄温泉(大村線経由)の2回実施。記者は午前発の試乗会に参加した。

西九州新幹線の起点となる武雄温泉駅の在来線ホーム(1番線)で待っていると、佐世保方面から白い車体の3両編成がエンジン音を響かせながら入ってきた。「ふたつ星4047」専用車両で3両とも国鉄気動車キハ40系のキハ40・47形として製造されたものだ。改造に際し車両番号をすべて「4047」にそろえた。

武雄温泉駅に入線する「ふたつ星4047」。【撮影:草町義和】

両端の1号車(キハ47-4047)と3号車(キハ147-4047)は普通車指定席で、肥薩線の特急「はやとの風」用に改造された車両を再改造したもの。JR九州の観光列車としては「標準仕様」といえる木装を採用。窓のほうを向いた席も設けられている。このうち1号車はバリアフリートイレも設置された。

1号車のキハ47-4047。【撮影:草町義和】
1号車の車内。JR九州の観光列車では標準的になった木装。【撮影:草町義和】
窓向きの席もある。【撮影:草町義和】
バリアフリーに対応したトイレ。【撮影:草町義和】
3号車のキハ147-4047。【撮影:草町義和】
3号車の座席も1号車とほぼ同じ構成だが色が異なる。【撮影:草町義和】

中間の2号車(キシ140-4047)も肥薩線の観光列車「いさぶろう」「しんぺい」用として改造された車両を再改造したもの。食堂車扱いのビュッフェ・ラウンジ車でフリースペースや物販カウンターなどが設けられている。

2号車はビュッフェ・ラウンジ車のキシ140-4047。【撮影:草町義和】
2号車の車内はフリースペースと物販カウンターなどがある。【撮影:草町義和】

「ふたつ星4047」は10時02分、3号車を先頭に武雄温泉駅を発車。佐世保線を東に進む。営業開始時のダイヤとは若干異なるが、ほぼ同じ時間帯だ。色づいた稲穂がまぶしい田園地帯のなかをしばらく走り、20分弱で肥前山口駅(9月23日「江北」に改称)に到着。地元江北町の人の歓迎を受け、物産品の販売も行われた。

肥前山口(江北)駅で地元の人の歓迎を受ける。【撮影:草町義和】

ここで列車は向きを変えて1号車が先頭に。佐世保線から長崎本線(長崎方面)の線路に移る。江戸時代から酒造りが盛んで酒蔵が多い佐賀県鹿島市内の肥前浜駅では13分(営業開始時は17分)停車。駅舎併設の日本酒バー「HAMA BAR」で地酒の飲み比べセットが販売され、車内に持ち込むことも可能だ。

肥前浜駅に到着。この日は3番線だったが営業開始時は駅舎のある1番線ホームに停車する。【撮影:草町義和】
肥前浜駅の停車時間はやや長く駅舎を見物する余裕もある。【撮影:草町義和】
肥前浜駅の駅舎に併設されている日本酒バーで地酒の飲み比べセットが販売されていた。【撮影:草町義和】

この駅を出ると進行方向左側に有明海が見えるようになる。干満差が日本一(約6m)でちょうど干潮の時間帯。場所によっては水面ではなく「泥面」が広がっており、これはこれでおもしろい。多良~肥前大浦では「景観徐行」と題して速度を落とし、有明海をゆっくり見られるようにしていた。

干満の差が日本一とされる有明海。水面ならぬ「泥面」が広がる。【撮影:草町義和】
多良駅でもお出迎えの横断幕。【撮影:草町義和】

肥前大浦駅を過ぎると県境を越えて佐賀県から長崎県へ。ホームのすぐそばに海がある小長井駅で6分停車した。有明海を挟んで島原半島の雲仙普賢岳が見える。この駅を発車後、車内体験イベントとして有明海で作られた佐賀海苔の試食会が2号車で行われた。干満差が大きい有明海では河川から流入するミネラルなどの栄養素が行き渡り、良質な海苔を生み出すという。

有明海のすぐそばにホームがある小長井駅。遠くに雲仙普賢岳が見える。【撮影:草町義和】

試食前の佐賀海苔の説明が行われているあいだ、窓の外には諫早湾の干拓事業で建造された潮受け堤防とその水門が見えた。この干拓事業では水門の閉門によって海苔の色落ちなど漁業被害が発生したとされ、いまも裁判が続いている。その水門を見ながら佐賀海苔の説明を聞くことに、何とも不思議な感じを覚えた。

小長井駅の発車後に佐賀海苔の試食会。【撮影:草町義和】
佐賀海苔の説明中に諫早湾の潮受け堤防と水門が見えた。【撮影:草町義和】

12時を過ぎて列車は諫早駅に到着。脇にはクリームと赤の2色で塗られた島原鉄道の旧塗装復刻車が停車していた。ここから長崎本線は大村湾沿いの旧線とトンネル中心の新線の2ルートに分かれるが、観光列車の「ふたつ星4047」は旧線を進む。

諫早駅では島原鉄道の旧塗装車がお出迎え。【撮影:草町義和】

ここで出発直後に配られた弁当を開け、大村湾の青い水面を眺めながら舌鼓を打った。武雄温泉駅の食堂の手によるオリジナル弁当で、営業運転時には「特製ふたつ星弁当」「4047弁当」の2種類を提供する。今回配られたのは「特製ふたつ星弁当」。有明海の海苔と佐賀牛を使用した二段重の弁当だった。

大村湾を眺めながら弁当に佐賀牛などが入った弁当に舌鼓を打つ。【撮影:草町義和】

列車はいつしか長崎の市街地に入り、左側から西九州新幹線の高架橋が迫ってきて13時11分、長崎駅に到着。走行距離は106.1kmで所要時間は3時間ほど。表定速度は35km/hくらいだった。

終点の長崎駅。9月22日限りで運行を終了する在来線特急としての「かもめ」と並んだ。【撮影:草町義和】

「ふたつ星4047」は9月23日から運行開始。金・土・日・月曜と祝日を中心に運行される。運行区間は西九州新幹線と同じ武雄温泉~長崎だが在来線列車のためルートは異なり、さらに午前発と午後発でも運行経路が変わる。午前発(武雄温泉10時22分→長崎13時15分)は記者が今回試乗したのと同じ有明海沿いのルート。午後発(長崎14時53分→武雄温泉17時45分)は大村線を経由して大村湾の景色を楽しめる。

どちらも景色を楽しめるようゆっくりとした速度で走るが、列車種別は特急で全席普通車指定席。乗車には乗車券のほか指定席特急券も必要だ。所定の運賃・料金の合計は午前発の武雄温泉→長崎で4180円、午後発の長崎→武雄温泉は4500円になる。

弁当は午前発のみの提供で事前予約制。午後発も長崎スフレが事前予約制で提供される。2号車では沿線の地酒やアイスソルベなどの「ご当地グルメ」を販売。事前予約制の体験メニューも提供される。

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