西九州新幹線(佐賀県・長崎県)の開業を13日後に控えた9月10日、JR九州は報道関係者向けの試乗会を開催した。全線整備のめどが立っていないため、武雄温泉~長崎のみの部分開業。武雄温泉駅で博多方面からの在来線特急との連絡を図り、「対面乗換方式」を導入する。
試乗会は在来線特急の区間を含む佐賀~長崎で開催。佐賀→武雄温泉は試乗会向けの貸切列車が設定され、佐賀駅を10時00分に発車した。
車両は白い車体が特徴の特急電車885系のSM10編成(6両)。現在は博多~長崎を結ぶ在来線特急「かもめ」でおもに運用されているが、西九州新幹線の開業に伴う9月23日のダイヤ改正以降は博多~武雄温泉を結ぶ特急「リレーかもめ」などで運用される。貸切列車の車内でも案内装置に「10時00分発、武雄温泉行き特急『リレーかもめ号』です。」という言葉が流れた。
貸切列車は肥前山口駅(9月23日から「江北」に改称)でいったん停車し、長崎本線から佐世保線に進入。窓の外には色づき始めた稲穂で覆われた田んぼが広がっている。
10時24分頃、武雄温泉駅の10番線に入線。隣の11番線では、西九州新幹線の試乗列車がすでに停車していた。車両は同新幹線の列車「かもめ」用として製造されたN700SのY2編成(6両)だ。
この駅は在来線用の1・2・10番線と新幹線用の11・12番線があり、10番線と11番線のあいだに島式ホームが設置されている。つまり10番線に停車する在来線特急と11番線に停車する西九州新幹線は同じホームで乗り換える対面乗換が可能だ。
在来線の貸切列車から新幹線列車への移動を何度か試してみたところ、時間はおおむね40秒弱。ドアに近い座席からなら20秒ほどしかかからなかった。実際のダイヤでは乗換時間が所定で3分になる。
新幹線の試乗列車は10時46分に発車。すぐに左カーブして佐世保線の線路から離れ、一気に速度を上げていく。列車は嬉野温泉・新大村・諫早の各駅に停車しながら進むが、トンネルが全線の約6割と多いうえに高架橋の区間も背の高い防音壁が設置されている部分が多く、景色はあまり楽しめない。とはいえ嬉野温泉駅を発車してしばらくすると、進行方向右側の窓に青で染まった大村湾が見えた。
列車は11時17分、長崎駅に到着。武雄温泉駅からの所要時間は途中各駅への停車時間を含めてもわずか30分ほどだった。開業後のダイヤでは一部の駅を通過する列車で最短23分になる。
西九州新幹線は9月23日、武雄温泉~長崎の66.0km(営業キロは69.6km)が開業。在来線特急「かもめ」が廃止され、博多~武雄温泉を結ぶ在来線特急「リレーかもめ」(一部は「みどり」「ハウステンボス」)と武雄温泉~長崎を結ぶ新幹線「かもめ」を乗り継ぐ運行体系に変わる。
新幹線「かもめ」の1日の運行本数は上下計44本(新大村~長崎の区間便を除く)。乗り継ぎを含む博多~長崎の所要時間は1時間20~40分で、いまより20~40分ほど短縮される。所定の運賃・料金の合計(普通車自由席)は博多~長崎が5520円で、いまより460円高くなる。
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