山形鉄道「車両更新」「次世代信号システム」で利便性向上 再構築計画が認定



国土交通大臣は3月29日、山形鉄道などが申請していた鉄道事業再構築実施計画を認定した。沿線自治体が引き続き鉄道用地を保有して山形鉄道に無償で貸し付けるほか、山形県と沿線自治体が施設や車両の更新・整備、修繕・維持管理の費用を負担する。

山形鉄道のYR-880形。【撮影:草町義和】

山形鉄道はフラワー長井線・赤湯~荒砥の30.5kmを運営。同社が第1種鉄道事業者として施設や車両を保有して列車の運行と維持管理を行っているが、鉄道用地は沿線の長井市・南陽市・白鷹町・川西町が保有し、無償で山形鉄道に貸し付けている。実質的には公有民営の上下分離方式に近い。

今回認定された実施計画では、鉄道用地の無償貸与を継続。さらに利便確保策として「次世代信号システムの導入による利便性向上」「安全・安心な運行サービスの提供」「地域と連携した利用促進・増収施策の推進による持続可能性の向上」を盛り込んだ。これらの施策にかかる費用は合計21億2000万円。このうち「次世代信号システム」「安全・安心な運行サービス」の一部は社会資本整備総合交付金を活用する予定だ。

次世代信号システムの導入は2024~2026年度の3年間で3億3000万円を投じる。これにより列車の位置が性格に把握でき、部分的にパターンダイヤの導入や到着・遅延時間などの情報提供が可能に。情報のオープン化を図ることで将来的なMaaSの実現を目指すことも可能になり、利便性の向上が期待できる。

運行サービスの安全・安定化費用は10年間で17億7000万円。枕木のプレストレスト・コンクリート化による乗り心地の改善や、踏切設備の全方向型警報灯化(LED化)など各種施設の更新・修繕を図る。

認定された実施計画によるフラワー長井線の事業スキーム。【画像:国土交通省】

フラワー長井線の利用者数は2022年度で41万8000人。国土交通省によると、2033年度の見込みは再構築事業を実施しない場合で34万4715人に減るが、再構築事業を実施すれば44万人に増える。当期純利益(2024~2033年度の10年平均)も再構築事業を実施しなければ2715万1000円の赤字だが、実施すれば80万円の黒字が見込まれるという。

山形鉄道は1988年から1990年にかけ、YR-880形気動車を8両導入。このうち2両が廃車済みだが、残り6両はエンジン更新などのリニューアルを行って現在も運用している。デビューから30年以上が過ぎており、同社は今後、新型車両の導入や他社からの車両の譲受も視野に入れ車両の更新を検討するとみられる。

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