秩父鉄道三ヶ尻線の一部廃止は12月31日付けに



秩父鉄道が武川~三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間(埼玉県)で運営している貨物線(三ヶ尻線)の一部廃止は12月31日付けを予定していることが、10月5日までに分かった。ただし今後、廃止予定日までに列車が運転される可能性は低いとみられる。

秩父鉄道三ヶ尻線の位置。専用鉄道時代の籠原駅に接続する部分(赤点線)は廃止済み。三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間(赤実線)が12月31日付けで廃止される。武川~三ヶ尻間(青)は引き続き残る。【画像:国土地理院地図/加工:鉄道プレスネット編集部】

国土交通省の関東運輸局によると、秩父鉄道は6月8日、三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間の第1種鉄道事業(貨物運送)を12月31日付けで廃止すると届け出ていた。鉄道事業法では、旅客運送の鉄道事業を廃止する場合は廃止予定日の1年前までに届け出なければならないと定めているが、貨物運送は6カ月前までに届け出れば廃止できる。

秩父鉄道は3月、同区間の貨物輸送を9月30日に終了すると発表。9月28日に東武鉄道向けの新車を貨物列車扱いで輸送(甲種輸送)したのを最後に、営業運転の貨物列車は走っていない。10月3~5日には、熊谷貨物ターミナル駅で開催された撮影会イベントのため、電気機関車や貨車の回送列車が走った。

今後、廃止予定日までに営業列車や回送列車などが走る可能性について、秩父鉄道は「まったくない」と話しており、9月28日の甲種輸送と10月5日の回送列車が、三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間の最後の列車になるとみられる。

三ヶ尻線は1960年代、太平洋セメント熊谷工場にセメントの原材料となる石灰石や、セメント生成燃料の石炭を運ぶための鉄道として計画され、秩父本線の武川駅から工場最寄りの三ヶ尻駅を経て高崎線の籠原駅に至る専用鉄道が整備された。1979年には、高崎線との接続地点を熊谷貨物ターミナル駅に変更。貨物列車の営業運転を行う秩父鉄道の貨物線として、改めて開業している。

このうち三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間は、輸入炭を熊谷工場に運ぶ貨物列車(石炭列車)が定期的に運転されていたが、太平洋セメントが石炭輸送をトラックに切り替えたため、今年2020年3月までに運転を終了した。

秩父鉄道は「同区間は今後これら(石炭輸送や甲種輸送)に代わる貨物輸送が見込めず、また、経年による設備の老朽化等による設備更新費用として多額の支出が見込まれます」として、三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間の廃止を決めた。残る武川~三ヶ尻間は引き続き、石灰石を運ぶ貨物列車が運転される。