信楽高原鉄道「新型車両」導入へ 再構築計画認定、既存車両は多言語対応に



国土交通大臣は2月29日、滋賀県甲賀市と信楽高原鉄道の2者が申請していた鉄道事業再構築実施計画を認定した。これを受けて2者は新型車両の導入などを行う。

信楽高原鉄道の車両で最も新しいSKR500形。【撮影:草町義和】

再構築実施計画の概要によると、実施期間は3月10日から2033年3月31日までの10年間。利用者の利便確保策として「新型鉄道車両の導入、車両の多言語化等による利便向上」「既存設備の維持・再整備、新設改良」「駅及び停車場施設の改良」「まちづくり、観光施策との連携」を盛り込んだ。事業費は合計約23億円で、一部は社会資本整備総合交付金を活用する予定。

「新型鉄道車両の導入、車両の多言語化等による利便向上」の事業費は5億円。新型車両は「環境性能に優れた新しいタイプの気動車」とし、振動の抑制による乗り心地の改善や加速性能の向上による速達性の確保を図る。既存車両も多言語対応を行い、外国人旅行者の利便向上を図る。

新型車両の具体的な仕様などは明らかにされてない。甲賀市は2023年3月と12月の市議会で道路と鉄道の両方を走れるバス「DMV」の導入について質問された際、導入は困難と答弁。専用車両の導入に加えて線路や駅を大幅に改修する必要があること、既存車両が使えなくなること、輸送力が小さいこと、巨額な経費がかかること、びわこ京阪奈線構想による近江鉄道線との兼ね合いなどを挙げ、DMV導入の可能性を否定している。このため標準的な鉄道車両タイプを採用するとみられる。

甲賀市が導入は困難としているDMV。【画像:たろとれ/写真AC】

このほか、16億円かけて線路設備の維持・更新と信号機などの更新を実施。安定輸送・定時性の確保による利便性の向上や省エネルギー化を図る。駅施設などの改良も2億円かけて実施し、キャッシュレス化による利便性向上や案内表示の多言語化などを進める。

信楽高原鉄道は甲賀市内の信楽線・貴生川~信楽14.7kmを運営する第三セクター。2013年、地域交通法に基づく鉄道事業再構築実施計画の認定を受け、公有民営の上下分離方式の経営に移行した。甲賀市が信楽線の施設や車両を保有し、信楽高原鉄道に無償で貸し付けている。車両は現在、2001~2002年製のSKR310形気動車2両と2015年製のSKR400形気動車1両、2017年製のSKR500形気動車1両の合計4両が運用されている。

輸送密度は2012年度の時点で1116人だったが、コロナ禍が本格化する前の2019年度は1000人を割り込んで985人に。2022年度は762人で厳しい経営が続いている。2013年に認定された再構築実施計画の期間は今年2023年3月31日までで、信楽高原鉄道と甲賀市は引き続き上下分離方式で信楽線を維持するため、改めて再構築実施計画の認定を申請していた。

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