JR四国は8月26日、旅客運賃の上限変更認可を国土交通大臣に申請した。認可された場合、来年2023年春に値上げを行う。認可申請が不要な届出制の特急料金の値上げなども計画しており、全体の改定率は12.82%で1割以上の大幅な値上げになる。
普通旅客運賃の改定率は12.51%。現在は賃率に乗車距離を乗じて運賃額を算出する「対キロ制」だが、改定後は100kmまでの区間について、距離をいくつかの区分に分割して区分ごとに運賃を定める「対キロ区間制」を導入する。ほかの交通機関を考慮した運賃水準で設定するという。
近距離区間の運賃額(幹線)は、初乗り(3km以内)が190円でいまより20円の値上げ。4~6kmは30円値上げの240円、7~10kmは60円値上げの280円、11~15kmは70円値上げの330円、16~20kmは70円値上げの430円になる。高松~徳島74.5kmは170円値上げの1640円。
101km以上は従来通り対キロ制だが、101~200kmは賃率を現在の16.2円から3円引き上げて19.2円にする。201km以上の賃率は据え置く。おもな区間の運賃は高松~松山194.4kmが400円値上げの3960円で、高松~高知159.3kmも400円値上げの3190円になる。
定期旅客運賃は普通旅客運賃の改定に基づき改定し、割引率も見直す。通勤定期の場合、1カ月の割引率はいまより4.9%引き下げて48%に。6カ月も5.6%引き下げて53.2%とする。通学定期は高校生用の1カ月で0.7%引き下げの76.2%。この結果、定期旅客運賃の改定率は25.55%。通勤定期が28.14%、通学定期も22.43%で2割以上の値上げになる。
高松駅からの定期旅客運賃(1カ月)の場合、高松~坂出21.3kmで通勤定期が2570円値上げの1万6470円。通学定期(高校生用)は1590円値上げの9920円になる。
料金の改定率は5.13%。特急料金は25kmまでの自由席特定特急料金を120円値上げして450円とし、25kmまでの指定席特急料金は「A特急料金」と統合して220円値上げの1290円にする。50kmまでの自由席特急料金も「A特急料金」と統合して760円とし、230円値上げする。50km以上の特急料金は「加重な負担となること、都市間輸送はバス等との競争が厳しい」として改定しない。
1996年の運賃改定時に運賃額の激変緩和を目的に導入された特定運賃は廃止する予定。JR四国は「導入から25年以上が経過し、激変緩和策の役目を終えたと考えられることから特定運賃を廃止し、通常の運賃計算方法を用いる」としている。
割引切符やフリーパスなどの特別企画乗車券は、運賃改定が認可された場合に改定分相当を引き上げることを基本にする。ただし切符ごとの固有の事情も勘案して発売額を決めて届出を行うという。
JR四国は1987年の発足当初から年間70~140億円台の営業赤字を計上しており、一度も黒字になったことがない。このため経営安定基金の運用収益などで赤字の穴埋めを行っている。しかし沿線人口の減少などで運輸収入の減少が続いているのに加えコロナ禍の影響もあり、2021年度決算は営業損益で202億円の赤字を計上。経営安定基金の運用を充当しても33億円の経常赤字で、厳しい経営が一段と強まっている。
その一方でJR四国は安全・安定運行のための設備投資や保安設備の老朽化に伴う取替費などの確保が必須とし、「今後とも地域の基幹的公共輸送機関としての役割を果たしていくため、徹底した経営努力を前提として、国、地域からの支援とともに、お客様にも一部のご負担をお願いしたく運賃改定を計画いたしました」としている。
値上げによる増収規模は年間20億円程度。JR四国はこれに伴い安全対策設備の整備や更新を進める。輸送需要に応じた列車運行の効率化や2両編成以上の列車でのワンマン運転化の拡大、スマートフォンアプリを活用した新チケットシステムの開発による切符の販売体制の見直し、車両の検査修繕を行っている多度津工場のロボット化などによる近代化を実施する。
また、老朽化した駅信号設備の更新に合わせ、一部の駅では駅舎側ホームの列車発着本数を増やせるようにする。キハ40系など普通列車用の老朽化した気動車を更新するための新型ローカル気動車の開発・導入や、特急電車8000系をリニューアルしてコンセントを増設するなどサービス向上も推進する。
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