「36ぷらす3」あすデビュー 九州「一周」も「一部」もOK、車内設備と料金、予約方法

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JR九州の新しい観光列車「36ぷらす3」が、あす10月16日の鹿児島中央発→宮崎行きから運行を始める。同社のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」と同様に九州を周遊するタイプの列車だが、その中身は似て非なるものといえる。

JR九州の新しい観光列車「36ぷらす3」。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

■初めての「ダメだし」観光列車

車両は787系電車を改造した「36ぷらす3」専用車両(6両編成)を使用する。この車両は鹿児島本線の在来線特急「つばめ」用として1992年にデビューし、2002年までに140両が製造された、JR九州を代表する特急型電車だ。

改造前の車体色はダークグレーだったが、改造後は艶のある黒一色になり、金色の縁取りやロゴマークなどで装飾された。その外観は「ななつ星」専用車両のDF200形7000番台ディーゼル機関車と77系客車に似ている。

艶のある黒い車体と金色のアクセントが目立つ「36ぷらす3」専用車両。【画像:JR九州】
1992年にデビューした787系の車体はダークグレー。【撮影:草町義和】
JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」。【撮影:草町義和】

改造前の787系をデザインしたのは、ドーンデザイン研究所の水戸岡鋭治氏。いまでは全国各地の鉄道車両のデザインを手がけていることで有名だが、新造電車のデザインを本格的に行ったのは、この787系が初めてだ。

787系は国際デザイン賞「ブルネル賞」を受賞し、水戸岡氏の鉄道車両デザイナーとしての地位を確固たるものにした車両ともいえる。「36ぷらす3」のデザインも水戸岡氏が担当し、自身の「作品」を自身でリニューアルすることになった。

水戸岡氏が9月29日の「36ぷらす3」披露式で話したところによると、787系の製造時にはできなかったことが「36ぷらす3」に盛り込まれている。

水戸岡氏は787系の車体色を黒にしたいと思っていたが、当時は「車体色に黒は使わない」ことになっていたため、ダークグレーにしたという。しかし、その後に登場したJR九州の観光列車などでは黒が使われるようになり、「36ぷらす3」の車体も艶のある黒で全体を塗装。金色の縁取りやロゴマークなどで装飾している。

その一方で水戸岡氏は「『ななつ星』や九州新幹線の800系電車より難しい仕事になった」とし、「最初のプレゼンでは初めて却下になった。ああ、却下されることもあるのかと思った」と話した。JR九州の青柳俊彦社長が水戸岡氏に続けて話したところによると、「デザインが却下の理由ではない。そのときは列車のコンセプトが固まっていなかった」という。

「36ぷらす3」の披露式で語る水戸岡氏。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

その後、「九州のすべてが、ぎゅーっと詰まった“走る九州”といえる列車」というコンセプトが決定。これに伴い、車両の車内外の設備やデザインも固まった。

■「元ビュッフェ」が再びビュッフェに

「36ぷらす3」専用車両の改造元は、787系のBM-15編成(6両)。改造に伴い編成番号も「36ぷらす3」にちなんでBM-363編成に変更された。

先頭部の左下に編成委番号「BM-363」の文字が見える。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

各車両の形式・番号(カッコは旧形式・旧番号)は次の通り。すべての車両がグリーン車扱いで、1・2号車はグリーン個室、3号車はグリーン個室とビュッフェ、4号車は「マルチカー」、5・6号車は開放タイプのグリーン席を設けている。

1号車:クモロ787-363(←クモロ787-2)
2号車:モロ786-363(←モハ786-205)
3号車:サロシ786-363(←サハ787-202←サハシ787-2)
4号車:サロ787-363(←サハ787-2)
5号車:モロ787-363(←モハ787-3)
6号車:クモロ786-363(←クモハ786-2)

車内デザインは「ななつ星」「或る列車」などと同様、大川組子を多用。天井は「格天井」「光天井」のほか、従来の787系の天井を生かした仕様にしたという。

内装で多用されている大川組子。【画像:JR九州】

座席やカーテンには、水戸岡氏が描いた植物などの柄が描かれている。壁や荷物棚などは、本物の木を加工した素材を使用しており、車両ごとに木の種類が異なる。床は寄木仕上げで、木にオリジナルの柄を印刷した「新しい表現」(JR九州)という。

●1号車(クモロ787-363)
3~4人用のグリーン個室。床はデッキ部などを除いて畳敷きにしている。JR九州の「D&S列車」(JR九州の観光列車シリーズ)で畳敷きが採用されたのは、これが初めてだ。

1号車の3~4人用グリーン個室。床が畳敷きになっている。【画像:JR九州】
グリーン個室はパーティションで区切られている。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

改造前からあったグリーン個室に加え、4人用個室3室を新設。密閉タイプの個室ではなくパーティションで区切られている。パーティションの高さを抑えることで、明るく開放的な空間にしたという。通路は片側に寄せて個室のスペースを広く取っているが、車両の中間を「クランク」にして通路の位置を反対側に変えている。

●2号車(モロ786-363)
4~6人用のグリーン個室で、車椅子対応席も2席分(車椅子の利用がない場合は共用スペースとして使用)ある。6人用の個室はJR九州の車両では初めてだ。1号車と同様に通路は片側寄りだが「クランク」はない。

2号車の6人用グリーン個室。【撮影:鉄道プレスネット編集部】
車椅子対応席もある。【撮影:鉄道プレスネット編集部】
2号車の通路。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

●3号車(サロシ786-363)
この車両は製造当初、普通車(4人用セミコンパートメント)とビュッフェの合造車だったが、2003年の九州新幹線の一部開業にあわせてビュッフェを廃し、全室普通車に改造された。今回の「36ぷらす3」専用車両への改造に伴い、17年ぶりにビュッフェ付きの合造車に再び生まれ変わった。

1号車寄りのグリーン車部分は、4人用セミコンパートメントを1~2人用グリーン個室としてリニューアル。中央に通路、その両脇に2人用個室を配しており、個室というよりはボックス席に近い。

3号車のグリーン個室エリア。通路を中央に配している。【撮影:鉄道プレスネット編集部】
3号車のグリーン個室は1~2人用。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

6号車寄りのビュッフェは旧ビュッフェの部分を生かす形で設けられており、旧ビュッフェの特徴だったドーム天井も生かされている。床や壁にはコロナウイルスに強いとされる銅板を使った。中央部のカウンターで物品の販売を行うほか、新たに業務スペースを設置し、車内での昼食の提供・準備に活用。また、リーチイン冷房庫も設置し、九州の飲食物を自由に選べる「ミニミニコンビニの楽しさ」を演出するという。

3号車のビュッフェ部分。【画像:JR九州】

●4号車(サロ787-363)
4号車「マルチカー」は、多目的に利用できる共用スペース。ミニカウンターも併設されている。体験メニューや車内イベントでの活用が考えられており、車内に設置した大型モニターで沿線の動画を放映する。

4号車の「マルチカー」。【画像:JR九州】
「マルチカー」に設置された大型モニター。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

●5号車(モロ787-363)
改造前は横1列4席(2+2席)の普通車だったが、横1列3席(1+2席)の開放席タイプのグリーン車に変わった。座席は食事を取りやすいよう、特製のテーブルを設置。座席背面は多目的に利用できる革製ポケットを採用した。車両中央部には案内や物品販売などに活用できるスペースが設けられている。

5号車のグリーン車(開放席タイプ)。【画像:JR九州】
座席の背面。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

●6号車(クモロ786-363)
5号車と同じ横1列3席の開放席タイプのグリーン車だが、床は1号車と同じ畳敷き。運転台寄りの多目的スペースも畳敷きになっている。

6号車の床は1号車と同様に畳敷きだ。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

■5日間で九州7県を一周

「36ぷらす3」は、原則として毎週木曜日から月曜日の5日間で、九州7県を一周する。各曜日の運行区間と時刻は次の通り。

「36ぷらす3」の運行ルート。【画像:JR九州】

●木曜日ルート
博多9時52分発または9時58分発→熊本11時50分着・12時00分発→鹿児島中央16時24分着
※玉名駅で「おもてなし停車」(11時10分頃に約20分停車)
※牛ノ浜駅で「おもてなし停車」(14時25分頃に約15分停車)

●金曜日ルート
鹿児島中央12時16発→宮崎15時57分着
※大隅大川原駅で「おもてなし停車」(13時20分頃に約50分停車)
※青井岳駅で「特別停車」(15時00分頃に約10分停車)

●土曜日ルート
宮崎空港11時25分発→宮崎11時35分着・11時43分発→大分16時23分着・16時37分発→別府16時46分着
※延岡駅で「おもてなし停車」(13時05分頃に約10分停車)
※宗太郎駅で「おもてなし停車」(13時40分頃に約10分停車)
※重岡駅で「おもてなし停車」(13時55分頃に約20分停車)

●日曜日ルート
大分11時30分発→別府11時40分着・11時43分発→※門司港(進行方向変更)小倉15時01分着・15時11分発→博多16時32分着
※杵築駅で「おもてなし停車」(12時00分頃に約15分停車)
※中津駅で「おもてなし停車」(12時50分頃に約10分停車)
※門司港駅で「自由散策停車」(14時20頃に約30分停車)

●月曜日ルート(博多→長崎)
博多10時51分発または11時05分発→佐賀12時07分着・12時20分発→長崎15時38分着
※肥前浜駅で「おもてなし停車」(13時00分頃に約60分停車)

●月曜日ルート(長崎→博多)
長崎17時30分発→佐賀19時48着・20時05分発→博多21時03分着

各コースとも昼頃に、沿線の食材を使った「ランチプラン」を提供する。ただし月曜日ルートの長崎→博多は「ディナープラン」の提供になる。「おもてなし停車」「特別停車」「自由散策停車」の駅では乗車や下車はできないが、停車時間内に駅で開催されるイベントや駅周辺の散策を楽しむことができる。

「36ぷらす3」車内で提供される食事のイメージ。【画像:JR九州】

なお、当初の計画では10月15日の木曜日ルートから運行する計画だったが、木曜日ルートに含まれる肥薩おれんじ鉄道線が2020年7月豪雨の影響で一部不通となったため、10月16日の金曜日ルートから運行されることになった。肥薩おれんじ鉄道線は11月1日に全線復旧の予定。早ければ11月5日から木曜日コースの運行も始まるとみられる。

■「旅行商品」「切符」どちらも乗車可能

九州を一周する点では「ななつ星」に近いが、「ななつ星」が原則として1回のツアー運行ごとに一つの旅行商品として販売されるのに対し、「36ぷらす3」は1日ごとに運行区間を分割。旅行商品や切符も各日の運行区間ごとに片道で販売されるのが特徴だ。

また、「ななつ星」は完全なツアー専用列車だが、「36ぷらす3」はグリーン個室と開放席タイプのグリーン車の一部が旅行商品専用で、それ以外の開放席タイプのグリーン車は一般の臨時特急扱い。食事は付かないが、乗車券・特急券・グリーン券をセットにした切符「グリーン席プラン」を駅のみどりの窓口などで購入すれば乗車できる。

全5日間の旅行商品や切符を買って九州を一周するのはもちろんのこと、一部の区間だけ旅行商品や切符を買って乗ることもでき、柔軟にスケジュールを組むことができる。かつて九州の国鉄線で運転されていた、博多駅を発車して再び博多駅に戻る準急「ゆのか」(鹿児島本線・久大本線・日豊本線・鹿児島本線経由)などに近いといえるかもしれない。

おもなプラン・区間の発売額(大人、一人あたり)は次の通り。

●ランチプラン・ディナープラン(グリーン個室、食事あり)
1万7000円~3万円

●ランチプラン・ディナープラン(開放席タイプのグリーン車、食事あり)
1万2000円~2万500円

●グリーン席プラン(開放席タイプのグリーン車、食事なし)
木曜日ルート(博多→鹿児島中央):1万6860円
金曜日ルート(鹿児島中央→宮崎):1万1900円
土曜日ルート(宮崎空港→別府):1万1350円
日曜日ルート(大分・別府→博多):9450円
月曜日ルート(博多→長崎):8570円

「36ぷらす3」の旅行商品を購入できる特設ウェブサイトのトップページ。【画像:JR九州】
開放席タイプのグリーン車は一般の臨時列車扱いで切符を発売される。画像はJR九州ネット予約サービスの画面。【画像:JR九州】

食事付き旅行商品の予約・購入は、「36ぷらす3」の特設ウェブサイトで受け付けている。「グリーン席プラン」は特設ウェブサイトのほか、JR九州のインターネット予約サービスや、全国のみどりの窓口などで販売されている。

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