小田急電鉄の車両工場「移転」大野から伊勢原へ まちづくりと連携「新駅」も検討



神奈川県伊勢原市と小田急電鉄は3月8日、「持続可能なまちづくりを推進する連携協定」を締結した。伊勢原駅の西寄りに広がる農地に新しい都市計画道路や小田急の新たな車両工場を整備するほか、周辺のまちづくりと連携した新駅の整備も検討する。

伊勢原市内への移転が計画された大野総合車両所。【撮影:草町義和】

協定の概要などによると、小田急電鉄は伊勢原市内の串橋地区を中心とした地域を大野総合車両所(神奈川県相模原市)の移転先候補地とし、小田原線・伊勢原~鶴巻温泉の線路北側に広がる田園地帯に「伊勢原総合車両所(仮称)」を整備する。候補地の広さは約15haで東西670m・南北290m。

伊勢原総合車両所の候補地。伊勢原~鶴巻温泉の線路の北側になる。【画像:伊勢原市】
伊勢原総合車両所の配置イメージ。【画像:伊勢原市】

大野総合車両所は1962年に開設された相模大野駅付近の車両工場。鉄道営業法に基づく法定検査である全般検査と重要部検査に対応しており、小田急電鉄が保有するすべての車両の全般・重要部検査を行っている。

開設当時の主力だった4両編成を前提とした施設のため、現在の10両編成の検査時には編成の分割や屋外での作業が必要になるなどの課題を抱えている。これに加えて開設から60年が経過して施設や検査機械が老朽化。年間を通じて稼働していることから現在地での施設更新が難しく、新築移転する計画が浮上した。

伊勢原市は伊勢原総合車両所の候補地の北側を通る都市計画道路「田中笠窪線」の整備事業を推進する。田中笠窪線は伊勢原市西部地区から行政センター地区をつなぎ、国道246号を補完するもの。現在整備が進められている行政センター地区周辺の整備の進展を受け、鈴川工業団地から市道81号線まで約960mの区間を整備する。

連携協定の締結にあわせて公表された想定スケジュールによると、伊勢原総合車両所は2023年度から環境影響評価の手続きや現況調査などを実施。2026年度から用地買収や工事などを行う。田中笠窪線は2023年度から現況調査などを行い、2025年度から用地買収や工事などを実施。伊勢原総合車両所・田中笠窪線の使用開始は2033年度の予定だ。

まちづくりや都市軸形成の一環として「スマート新駅」の整備の可否も検討する。【画像:伊勢原市】

このほか、伊勢原市と小田急電鉄は都市計画道路と伊勢原総合車両所の計画を機に連携し、「産業都市軸の形成」「スマート新駅の検討」を含む「近未来のスマートモビリティ社会へ向けたまちづくり」を行うとしている。

公表された図面などによると、「スマート新駅」は伊勢原総合車両所の東側を候補地とし、2023年度から実現の可否も含め検討する。小田急電鉄の広報・環境部によると、「スマート新駅」は太陽光発電や新しい決済手段など最新の技術を導入するイメージという。

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