鉄道・運輸機構とJR九州は3月19日、半年後の開業が迫った西九州新幹線の大村車両基地(長崎県大村市)で同基地の完成記念式典を開催。N700S「かもめ」編成が留置された車庫などを報道関係者に公開した。
大村車両基地は西九州新幹線の嬉野温泉~新大村間に設けられた車両基地。在来線(大村線)の竹松駅から北北西へ約1.7km、新幹線の新大村駅からは約2.5kmほどで、西九州新幹線の高架橋と大村線の線路に挟まれた場所に整備された。
車両基地の長さは約1kmで、幅は最大約170m。線路は留置線2本と仕交検線2本、全検整備線1本、転削線1本、臨修線1本、台振線1本、解体線1本、引上線1本、車体検修線1本で構成されている。
保守基地部分を含む総面積は約10万9000平方mで、九州新幹線(鹿児島ルート)・熊本総合車両所(約20平方m)の半分ほどの広さ。対応編成も熊本総合車両所が8両編成なのに対し、大村車両基地は6両編成だ。鉄道・運輸機構の関係者によると、幅はこれ以上拡張できないが、基地の北側は将来的には8両編成に対応できるよう、余裕を持たせているという。
西九州新幹線はほかの新幹線の車両基地と線路がつながっていない「独立路線」のため、大村車両基地は車両の留置や列車の折り返しだけでなく一通りの法定検査に対応している。2日に一度行う仕業検査のほか、交番検査(走行距離3万kmまたは30日以内)にも対応しており、いずれも仕交検線で検査を行う。
台車検査(60万kmまたは18カ月以内)は台振庫で台車を取り外し、熊本総合車両所に台車を運んで検査する。全般検査(120万kmまたは36カ月以内)は車体検修を台振庫、車体塗装を塗装場で行い、機器の検査は熊本総合車両所に機器を運んで行う。
公開当日は全検整備線に西九州新幹線「かもめ」で運用するN700Sの編成が1本(Y1編成)留置されていた。西九州新幹線では開業時に24両(6両編成4本)のN700Sを導入する計画で、1月にY1編成が搬入済み。残る3編成も今後順次搬入される。5月の連休明けには試運転が始まる見込みだ。
JR九州の関係者によると、「かもめ」向けN700Sは現在、鉄道事業法に基づく車両確認に向けた準備が進められているところ。構造上はJR東海のN700Sをベースにしているが、法手続き上は九州新幹線800系の構造装置変更の扱いで車両確認を受けるという。
西九州新幹線の総工事費は6197億円。2021年度までの予算累計は5792億円で、予算ベースの進捗率は93%に達した。2022年3月1日時点では土木工事と軌道工事が完了しており、駅舎などの建築工事もほぼ完了。電気関係の工事の進捗率は92%に達している。
9月23日には武雄温泉~長崎間の約67kmが開業の予定。大村線にも西九州新幹線の新大村駅に併設される同名駅と、大村車両基地に隣接する大村車両基地駅が開業する予定だ。
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