中高年夫婦に限りJRのグリーン車が乗り放題の企画切符「フルムーン夫婦グリーンパス(フルムーンパス)」が、今年2022年は発売されないことが8月31日までに分かった。発売開始から40年で、その歴史に幕を閉じることになりそうだ。
「フルムーンパス」は例年、9月から翌年5月まで発売(利用できる期間は10月から翌年6月、年末年始など一部の日を除く)。JRグループは毎年8月20日頃に発売を案内していたが、2022年8月は案内していない。
JR西日本の広報担当者によると、「フルムーンパス」の発売実績が落ち込んでおり、2022年は発売しないことを決定。来年2023年以降もいまのところ発売の予定はないという。
「フルムーンパス」は二人合わせた年齢が88歳以上の夫婦に限り、JR全線のグリーン車を自由に乗り降りできるフリーパス。有効期間は5・7・12日間の3種類あり、2021年10月~2022年6月分の発売額は原則として5日間用が8万4330円、7日間用が10万4650円、12日間用が13万320円だった。
40年ほど前の1981年、経営が悪化していた当時の国鉄が新規需要開拓の一環として発売。この切符のテレビCMやポスターでは1930年代から数多くの映画で共演していた上原謙さんと高峰三枝子さんが夫婦役で出演し、二人の温泉入浴シーンが話題になった。
国鉄はその後も全線乗り放題型パスとして普通列車限定の「青春18のびのびきっぷ」(1982年、現在の「青春18きっぷ」)や中高年女性グループ客向けの「ナイスミディパス」(1983年)を相次いで発売。1987年の国鉄分割民営化後はJR旅客6社が発売を引き継いだ。このうち「ナイスミディパス」は2008年限りで発売を終了しており、国鉄時代から発売されているJR旅客6社共同の企画切符は外国人向けを除くと「青春18きっぷ」だけになる。
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