福岡地下鉄空港線~福北ゆたか線「接続線」全ケース赤字 4ルート基礎調査まとまる



福岡県は福岡市営地下鉄空港線とJR九州の福北ゆたか線を結ぶ「接続線」の構想について、昨年度2021年度に実施した基礎調査の結果を取りまとめた。ルート4案と運賃3案、運行本数2案で調査。収支採算性はすべての案で赤字になったが、福岡県はこの調査を「これからの検討の出発点となるもの」と位置付け、さらに精査と検討を進める考えだ。

現在はJR筑肥線・唐津線との相互直通運転を行っている福岡市営地下鉄空港線の列車。【撮影:草町義和】

7月12日に福岡県が発表した調査結果の概要によると、接続線の整備区間は空港線・福岡空港~福北ゆたか線・長者原を最短距離で結ぶ「Aルート」(約3.7km)と迂回(うかい)して中間駅を設置する「Bルート」(約6.3km)を設定。さらに福北ゆたか線との接続を原町駅として最短距離で結ぶ「Cルート」(約3.2km)と迂回(うかい)して中間駅を設置する「Dルート」(約6.4km)も設定した。

開業年度は2040年度として準備期間を約9年、建設期間を約10年と設定。運賃は「200円(JR九州並)」「300円(福岡市地下鉄並)」「400円(西鉄バス並)」の3案とした。列車は空港線~接続線~福北ゆたか線の姪浜~直方を直通するものとし、1日の運行本数は接続線の区間で75本とした。

空港線と福北ゆたか線への乗り入れ本数は、両線で現在の本数を維持したうえで線路容量の範囲で乗り入れる「ケース1」(姪浜~直方の直通45.5本、姪浜~長者原の折り返し29.5本)と、両線の運行本数を乗り入れ本数も含め現状維持とする「ケース2」(姪浜~直方の直通29.5本、姪浜~長者原の折り返し45.5本)を設定した。

運行本数は二つのケースを設定した。【画像:福岡県】

福岡県はこれらの設定に基づき各案を検討。福岡空港~長者原・原町の所要時間は長者原接続で最短距離のAルートが最も短く4分に。これに原町接続で最短距離のCルート(7分)、長者原接続で中間駅設置のBルート(11分)が続く。所要時間が最も長いのは原町接続で中間駅設置のDルート(12分)になった。現在の所要時間に比べ15~23分の短縮が図られる。

概算事業費は原町接続で最短距離のCルートが720億円で最も安く、長者原接続で中間駅を設置するBルートが最も高い1480億円になった。このうち車両費は248億~281億円で全体の約2~3割を占める。空港線は直流電化なのに対し福北ゆたか線は交流電化で、直通運転には製造費が高い交直両用の電車を導入する必要がある。

1日あたりの需要予測は、乗り入れ区間の運行本数が増えるケース1で1万4400~1万7000人。乗り入れ区間の運行本数が現状維持になるケース2では1万2100~1万4700人となった。

開業後40年間の収支採算性は接続線のみの場合、すべてのケースで赤字とされた。赤字額が最も小さいのは、原町接続・最短距離・乗り入れ区間の本数増加(150億~470億円)。最も大きくなるのは福岡空港~長者原・中間駅設置・乗り入れ区間の本数現状維持(830億~1160億円)になった。

所要時間や概算事業費、需要予測、収支採算性の調査結果。【画像:福岡県】

福岡県は運行ルートや工法、事業主体、国・地方・事業主体の費用負担割合などの精査や検討が必要としており、実現の可能性について引き続き検討を進める方針。

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