箱根登山鉄道は5月11日、鉄道線・小田原~強羅間(神奈川県)の運賃変更を国土交通省の関東運輸局長に申請した。改定率は10.9%。認可された場合、10月1日に値上げする。同社の運賃改定は消費税率の引き上げに伴うものを除くと25年ぶり。
普通運賃の上限は各区間で現行運賃から20~90円値上げされる。初乗り(1~3km)は現在の140円から20円値上げされて160円に。現在はJR本州3社(幹線)の初乗り運賃(切符150円、ICカード147円)より安いが、値上げされればJRより高くなる。おもな区間は小田原~箱根湯本間が40円値上げの360円、小田原~強羅間が90円値上げの770円。
定期旅客運賃の上限も現行運賃より高くなる。小田原~強羅間の定期運賃は大人通勤・1カ月でいまより2320円高い2万8090円に。大人通学・1カ月は1万4490円で1200円の値上げになる。
箱根登山鉄道は認可後、上限運賃と同額の実施運賃を設定し、10月1日に運賃改定を実施する予定。鋼索線の運賃は改定しない。
箱根登山鉄道によると、鉄道線の輸送人員は1990年度の1032万1000人をピークに減少し、2010年度には800万人を下回った。その後は訪日外国人旅行者の増加で2017年度に822万1000人まで回復したが、2019年の台風による一部不通や2020年以降のコロナ禍で利用者は大幅に減少。2020年度は413万4000人とピーク時の4割程度になった。
一方で開業100年を超え老朽化したトンネルなどの設備改修などを実施。2019年の災害復旧で被災前の運輸収入を上回る規模の設備投資を余儀なくされた。この結果、減価償却費が10年前に比べ7割以上増加し、設備の維持管理コストも大幅に上昇した。
同社は保守作業の効率化などコストダウンを進めてきたが「公共交通としての役割を果たすための費用削減には自ずと限界があり、現行運賃水準のままでは中長期的な事業運営は極めて困難」とし、運賃の値上げを申請することにしたという。
箱根登山鉄道は今後、製造から30年以上が経過して車体の腐食や搭載機器の老朽化が進んでいる鉄道車両について、延命対策として車体再生工事を実施し、車両の安全性や安定性の向上を目指すとしている。
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