近鉄橿原線「駅のなかの駅」八木西口駅の「廃止」可能性一段と高まる 新駅整備の条件



近鉄橿原線・八木西口~畝傍御陵前間に構想されている新駅(奈良県橿原市)について、奈良県の荒井正吾知事は3月4日、近鉄が新駅設置の条件として八木西口駅の廃止を強く求めていることを明らかにした。

存廃が取りざたされている八木西口駅。【あっか/photolibrary】

新駅は近鉄橿原線と国道165・166号の交差部付近が候補地で、距離は大和八木駅から約1.3km、八木西口駅から約900m、畝傍御陵前駅から約1kmとみられる。近くには奈良県立医科大学と同大学付属病院がある。神武天皇陵とされている場所の北側にあった農業研究開発センターの跡地に県立医大のキャンパスを移転、整備する工事が現在進められており、付属病院を再整備して周辺の再開発を図る計画も浮上。その一環として新駅の整備が構想された。

八木西口駅と新駅の位置。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

奈良県と橿原市、近鉄は2015年から協議を続けているが、新駅を整備した場合は大和八木~八木西口~新駅間で駅間距離の短い区間が連続することもあり、八木西口駅の存廃を巡って協議が難航している。昨年2021年2月に橿原市が八木西口駅と新駅の併存を前提とした協議を近鉄に申し入れたが、近鉄は八木西口駅の廃止を条件に新駅の整備に協力すると回答していた。

今年2022年3月4日の県議会定例会で荒井知事は「(新駅の)早期実現に向け八木西口駅との併存と鉄道側の新駅設置の費用負担軽減の新たな提案を県から近鉄に行った。しかし近鉄は八木西口駅の廃止を強く求め、県の提案は成立しなかった。残念なことだ。現在橿原市で今後の具体的な対応方針を検討しているところだ」と答弁した。新駅を整備するなら八木西口駅の廃止は避けられない情勢だ。

現在の八木西口駅は1923年、大阪電気軌道(大軌)畝傍線(現在の近鉄橿原線)が平端駅から橿原神宮前駅(初代)まで延伸開業した際、八木駅として開業。1925年には現在の近鉄大阪線の一部になる高田(現在の大和高田)~八木間が大軌八木線として開業して分岐駅になった。1928年には駅名を大軌八木駅に改称している。

翌1929年、八木線は桜井駅まで延伸開業して桜井線に改称。この際、桜井線(大阪線)と畝傍線(橿原線)の交差部分に大軌八木駅を移転(現在の大和八木駅)したが、従来の大軌八木駅も残すことになり、駅名を八木西口駅に改称した。

こうした経緯もあり、八木西口駅は大和八木駅から400mほど離れているものの、営業上は大和八木駅の構内として扱われているというユニークな駅になっている。このため、八木西口駅から近鉄各駅までの運賃額は大和八木駅と同額だ。ただし、大和八木~八木西口間のみ乗車する場合は初乗り運賃の乗車券が必要で、同じ駅の構内でも入場券で乗車することはできない。

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