奈良~関西空港のリニア接続線「在来線活用+新線」検討 奈良県2022年度予算案



奈良県は2月21日、来年度2022年度予算案の概要を発表した。一般会計の規模は5503億1000万円で、前年度2021年度当初予算に比べ136億4800万円(2.6%)の増加。鉄道関係ではリニア中央新幹線の想定ルートやリニア奈良市付近駅~関西空港間を結ぶ接続線の調査費として2500万円を計上し、近鉄線の高架化・移設やJR関西本線(大和路線)・郡山~奈良間の高架化・新駅の関連予算も計上した。

奈良県が構想している奈良~関西空港間「狭軌高速鉄道」のイメージ(写真は北越急行ほくほく線で160km/h運転を行っていた特急「はくたか」)。【撮影:草町義和】

接続線は2019年度6月補正予算で「関西国際空港・リニア中央新幹線接続新幹線」(リニア新支線)として調査費を計上。当初は愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)と同じ常電導リニア方式の導入などを想定し、リニア中央新幹線の奈良市付近駅と関西空港駅を20分超で結ぶことが考えられていた。

しかし昨年2021年7月、奈良県はJR西日本の既設在来線と新線を組み合わせた「狭軌高速鉄道」の構想を発表。2022年度予算案では事業名を「関西国際空港・リニア中央新幹線接続線」として調査費を計上した。奈良県は「在来線活性化や事業費低減等の観点から、できる限り在来線を活用」する案を調査、検討するとしている。

奈良県が2021年7月に公表した案によると、奈良市付近駅~関西空港間の総延長は100km超で、このうち新線区間は30km程度。関西本線の法隆寺駅と和歌山線の畠田駅を結ぶ短絡線、和歌山線の御所市と五條市を結ぶ新線、和歌山線の和歌山県紀の川市とJR関西空港線合流部を結ぶ新線を建設する。

新線は単線で最高速度200km/hを想定。在来線は軌道強化などの改良を行い、最高速度は130km/hとしている。奈良県は狭軌高速鉄道のイメージとして、かつて北越急行ほくほく線で最高速度160km/hの運転を行った特急「はくたか」の写真を示している。

奈良市付近駅~関西空港間の所要時間は最短60分弱。整備費は約2500億円とした。このほか、接続線のルートを活用する形で奈良と紀勢本線の白浜を結ぶ総延長約200kmのルートも想定し、所要時間は2時間半程度としている。一方、2022年度予算案の説明資料に収録されている構想図では、御所市~五條市の新線が描かれておらず、整備費は1900億円程度としている。

奈良県が予算案の説明資料で示した接続線の想定ルート(青:在来線改良、赤点線:新線)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

リニア中央新幹線については、奈良・大和郡山・生駒の3市が提案している奈良市付近駅の候補地について、想定ルートなどに関する調査・検討を引き続き行う。候補地は奈良市の「JR新駅周辺候補地(八条・大安寺地区周辺)」「郊外型候補地 (JR平城山駅周辺)」「市街地型候補地 (JR奈良駅及び近鉄奈良駅周辺)」と大和郡山市の「JR大和路線と近鉄橿原線が交差する場所」、生駒市の「関西文化学術研究都市 高山地区第2工区」。

このほか、近鉄線の高架化・移設(7000万円)や大和路線・郡山~奈良間の高架化・新駅設置(40億6906万8000円、2023年債務負担行為は2億6500万円)の関連費用も計上された。

近鉄線の高架化・移設は大和西大寺駅付近を高架化するとともに、大和西大寺~近鉄奈良間の線路を移設して地下化を図るもの。奈良県・奈良市・鉄道事業者で協議を進めるほか、連続立体交差事業の認可に向けて都市計画決定に必要な調査を実施。鉄道の基本設計や関連道路の検討などを行う。

大和路線の郡山~奈良間では、2021年9月から高架化の工事が始まった。2022年度は高架化工事と用地買収を進めるほか、奈良市が実施する新駅西口の駅前広場整備への補助を行う。

《関連記事》
近鉄奈良線・大和西大寺~近鉄奈良「移設」で合意 踏切解消、線路は平城宮跡の外へ
大和路線・郡山~奈良間「高架化」来年度から工事着手 インターチェンジ結節の新駅も