広島電鉄「QRコード」活用の乗車システム導入へ 3年後に終了「PASPY」の代替に



広島電鉄・日本電気・レシップの3社は3月4日、QRコードや交通系ICカードを活用した「新乗車券システム」の開発に着手すると発表した。広島電鉄が現在導入している交通系ICカード「PASPY(パスピー)」の事実上の代替となるもの。2024年10月のサービス開始をめどに開発を進める。

広島電鉄の路面電車。【撮影:草町義和】

新乗車券システムは、利用者が自身のスマートフォンやパソコンから会員登録を行うことで利用できる。会員登録時にクレジットカードか銀行口座の登録が必要。登録すれば、切符の販売窓口を訪ねることなく自身のスマホやパソコンからチャージしたり定期券を購入したりすることができる。利用履歴の閲覧も可能だ。

路面電車・バスの利用時には、スマホに表示させたQRコードを車載機にかざすことで利用できる。スマホを持っていない場合は「専用の新たな交通系ICカード」を車載機にタッチすることで利用可能だ。「PASPY」で導入している各種割引サービスは、新乗車券システムでも実装される予定。

3社によると、新乗車券システムは「ABT方式」を採用。認証媒体となるQRコードやICカードの固有ID番号とひも付いた利用者情報をクラウドサーバ側で管理し、チャージ残高や定期券などの利用者情報もクラウドサーバ側で保持する。

従来型の「CBT方式」は車載機でICカードのID番号やチャージ残高などを読み取って運賃計算を行い、ICカードに更新情報を書き込むが、ABT方式の車載機ではID番号の読み取りのみ行う。機器側で高速な計算処理を行わないため、CBT方式に比べシステム全体で低コスト化を図ることができるという。

CBT方式とABT方式の違い。【画像:広島電鉄・日本電気・レシップ】

このほか、新乗車券システムはQRコード・ICカード以外の認証媒体にも対応することが可能。ほかの交通手段や街中・旅先などでのさまざまなサービスとの連携も期待できるという。

広島電鉄など広島エリアの公共交通は、2008年にサービス開始した交通系ICカード「PASPY」を導入している。しかし「PASPY」の運営協議会は2022年3月4日、機器の老朽化による更新に多額の投資が見込まれ、システムの維持が困難になっているとして、3年後の2025年3月までに「PASPY」のサービス提供を順次終了すると発表した。

アストラムラインを運営する広島高速交通も2022年3月4日、JR西日本の交通系ICカード「ICOCA(イコカ)」のカード・定期券を2024年度に発売すると発表している。「PASPY」導入事業者は今後、「新乗車券システム」の導入や「ICOCA」カード・定期券の発売を図るとみられる。

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