南阿蘇鉄道の豊肥本線乗り入れ、全線復旧と「同時」目指す 熊本県が予算計上



熊本県は2月10日、来年度2022年度の一般会計当初予算案の概要を発表した。規模は9030億円で当初予算額としては過去最大。鉄道関係では南阿蘇鉄道のJR豊肥本線への乗り入れ計画の支援として1億3300万円を新規計上した。

南阿蘇鉄道と豊肥本線。南阿蘇鉄道の列車は肥後大津駅まで乗り入れる。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

乗り入れ計画の全体事業費は3億8300万円。信号設備整備・線路接続などに3億5200万円、車庫改良などに3100万円かかることが想定されている。国庫補助対象の信号設備整備・線路接続などは国と県が3分の1ずつ負担し、残りの3分の1は高森町と南阿蘇村の2町村が負担。国庫補助対象外の車庫改良などの費用も熊本県が2分の1を負担し、残り2分の1は2町村が負担する。事業期間は2022年度。

南阿蘇鉄道は立野~中松~高森間17.7kmの高森線を運営する第三セクター。2016年の熊本地震で橋りょうが変形するなど甚大な被害が発生し、いまも立野~中松間10.5kmが運休中だ。2023年夏頃の全線復旧を目指して工事が進められている。

この復旧計画を機に、南阿蘇鉄道の列車を豊肥本線の肥後大津駅まで乗り入れさせ、利便性向上や観光客誘致を図る構想が浮上。昨年2021年10月にJR九州と南阿蘇鉄道が設計に着手した。

当初は沿線の2町村が乗り入れにかかる費用を負担することが考えられていたが、南阿蘇鉄道がコロナ禍で経営が悪化し、2町村がそれに対する支援を行っているため費用負担が難しくなった。このため2町村は昨年2021年11月、熊本県に財政支援を要請。蒲島郁夫知事は2町村の負担を大幅に軽減するため財政支援を行う方針を明らかにしていた。

熊本県は今後、運行本数やダイヤなど各種細目の協議や必要な設備などの整備を経て、全線の運行再開と同時の乗り入れ開始を目指すとしている。

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