JR西日本の大阪環状線で自動運転の走行試験 まず「添乗員付き」目指す

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JR西日本は2月19日、列車の自動運転に向けた走行試験を大阪環状線で行っていると発表した。同線などでの自動運転の実現を目指す。

JR西日本が公開した自動運転走行試験の動画のワンシーン。駅に入って減速しているが、運転士はハンドル操作していない。【画像:JR西日本】

走行試験は2月5日以降の終電後から始発前までのあいだ、大阪~京橋間(外回り)で断続的に実施。323系電車の8両編成1本を使い、運転士が乗り込んだ状態で自動運転の試験が行われている。

この試験では、加減速制御と定位置停止制御の機能を追加した制御装置を使用。運転士がボタン操作すると、自動的に加速や惰行、減速を繰り返し、次の駅の定位置に停車する。あらかじめ定められた走行計画に沿って運転されるが、状況に応じて走行計画を変化させる。

JR西日本は今回の走行試験で、自動運転の機能評価や今後に向けた課題の抽出を行う方針。自動運転を導入する路線について、JR西日本は「最初の線区は、大阪環状線、桜島線(JRゆめ咲線)を考えております」としている。

■人口減少への対応策として浮上

JR東日本は2018年から山手線で運転士が乗るタイプの自動運転の走行試験を開始。JR九州も昨年2019年から香椎線で試験を行っている。

運転士や車掌が乗務しない無人自動運転を行っているゆりかもめ。【撮影:草町義和】

鉄道の自動運転は近年、人口減少による運転士不足の解決策として注目されている。特にJR各社の場合、分割民営化の直前に国鉄が新規採用を中止したこともあって55歳以下の社員が少なく、今後数年間で55歳以上の社員の大量退職が進むことから、運転士不足への対応に追われている。

鉄道の自動運転は現在、あらかじめ定められた運転パターンなどに基づいて列車を自動的に運転する自動列車運転装置(ATO)を使用。列車の間隔などに応じて自動的にブレーキを操作する自動列車制御装置(ATC)がATOを補完する形になっている。

国際電気標準会議(IEC)などでは、鉄道の自動運転の形態を次の通り定義している。

●自動化レベルGoA2:半自動運転(STO)
・運転士が列車先頭の運転台に乗車
・運転士のボタン操作によりATOが自動運転を行う
・運転士はドアの開閉や緊急停止、避難誘導などを行う
※採用例:つくばエクスプレス線(東京都・千葉県・茨城県)や東京メトロ南北線など

●自動化レベルGoA3:添乗員付き自動運転(DTO)
・列車先頭以外の場所に運転士の資格を持たない係員が添乗
・ATOが自動運転を行う
・係員は避難誘導などを行う(運転操作は行わない)
※採用例:ディズニーリゾートライン(千葉県)

●自動化レベルGoA4:無人自動運転(UTO)
・運転士も含め係員は乗らない
・ATOが自動運転を行う
※採用例:ゆりかもめ(東京都)やポートライナー(神戸市)など

■既設路線への導入は現状困難

鉄道の自動運転といえば、ゆりかもめなどのように運転士や車掌がまったく乗っていないレベルGoA4の路線がイメージされるが、実際はつくばエクスプレス線やディズニーリゾートラインのように、運転士や係員が乗務している自動運転(レベルGoA2・3)もある。これらは運転操作の一部、または全部をATOが行い、運転士や係員を支援するものだ。

踏切が多い路線では人の立ち入りなど突発的なトラブルに対応しにくく、自動運転の導入は困難だ。【撮影:草町義和】

いずれのレベルも古くから採用例がある。だた、自動運転は人や自動車による軌道内への無断立ち入りなど、突発的なトラブルに対応しにくい。現在は「踏切がない」「人などが容易に立ち入れない構造(高架や地下)」「ホームドアがある」などの要件を満たしてないと、自動運転の導入は困難だ。

このため、手動運転の既設路線に自動運転を導入しようとすれば、駅や線路の構造を大幅に変える必要があり、膨大な費用がかかる。沿線の過疎化で都市部の鉄道以上に運転士不足が深刻化しているローカル線は経営も厳しく、現状では自動運転の導入は不可能に近い。

■「低コスト自動運転」実現できるか

そこで近年、自動運転に必要な要件を満たしていない路線に自動運転を導入するための研究が進められている。現在考えられているのは、センシング技術を活用して線路内を監視するシステムの導入などだ。

また、運転士の資格を持たない添乗員が列車の先頭に乗り込み、緊急時の停止操作のみ添乗員が行う「自動化レベルGoA2.5」の研究も進められている。これなら、自動運転を導入しつつ、突発的なトラブルにも対応しやすい。

JR西日本が検討している大阪環状線とJRゆめ咲線の自動運転も、まずは最初のステップとしてレベルGoA2.5を導入し、最終的には無人自動運転のレベルGoA4を目指す計画だ。

緊急停止操作だけでも、現在の法制度では運転士の資格が必要。ただ、自動車のAT限定免許のように、たとえばブレーキ操作に特化した限定免許制度を設ければ養成の期間やコストを抑えることができ、運転士不足の緩和にもなりそうだ。

監視システムの技術向上や法制度の改正などで自動運転を低コストで導入できるようになり、運転士不足やローカル線の経営改善につながるかどうか、今後の動向が注目される。

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