仙台地下鉄南北線「富谷延伸」PFI方式の整備を検討 複線・単線も



宮城県富谷市は仙台市営地下鉄南北線の富谷方面への延伸の検討を続けている。本年度2021年度は「PFI方式」による整備の検討を行う。

仙台市営地下鉄南北線の列車。【画像:T.suzuki/写真AC】

PFI方式は民間資金を活用して公共性の高い施設を整備する方式。富谷市は8月18日、「令和3年度 富谷市官民連携による新たな都市交通システムの整備手法検討調査業務」の公募型プロポーザルを公告し、10月4日に福山コンサルタント東北支社と契約した。おもに「地下鉄整備の基本計画及び費用便益・採算性」と「地下鉄のPFI事業による整備・運営手法」について検討を行う。

泉中央駅(仙台市泉区)から富谷市内の明石台地区まで3.4kmの延伸を想定。基本計画は複線と単線で整備する場合のルート・駅位置や建設計画、運行計画、将来の需要予測などを検討して取りまとめる。このほか、地下鉄整備の効果・影響、費用便益分析、事業採算性、事業化に向けた課題の整理などを行う。効果・影響については「富谷市以北の利用者にとってのメリット」「仙台市の利用者にとってのメリット」も検討。費用便益比は30年と60年で計算する。

PFI事業の検討では、そのメリットと関係法令などの整理、事業スキームの検討、収支前提条件の整理、事業採算性の検討などを行う。事業方式はBTOまたはBOTを検討する。契約額は897万6000円で、履行期間は来年2022年3月18日まで。

「人口10倍」市制施行を機に検討本格化

仙台と富谷方面を結ぶ鉄道は戦前に私鉄の仙台軌道(のちの仙台鉄道)が計画され、大正・昭和期の1922年から1929年にかけ、通町駅(現在の北仙台駅から南西へ約400m)から八乙女、富谷などを経由して陸羽東線の西古川駅(現在の大崎市)を結ぶ全長約44kmの路線が開業した。しかし戦後はバスへのシフトが進み、1960年までに廃止された。

仙台市営地下鉄南北線が泉中央駅まで延伸開業した1992年頃から、富谷方面への軌道系公共交通を整備する機運が高まり、仙台市は1992年に泉中央~泉ヶ丘間の延伸を調査。1993年には富谷町(現在の富谷市)を含む黒川郡の首長などで構成される協議会も南北線に連絡する新交通システムの検討を行ったが、採算性が見込めず検討は中断した。

一方で富谷町は1970年頃から仙台市の郊外住宅地として発展し、2015年の人口は1970年の10倍以上となる約5万2000人に増加。仙台~富谷間は自動車の交通量が増加し、富谷から泉中央駅に向かう路線バスも道路混雑による遅れが発生するようになった。

翌2016年に市制を施行した富谷市は、これを機に南北線の泉中央駅と富谷市内のアクセス改善策として軌道系公共交通の検討を本格化。昨年2020年に「富谷市都市・地域総合交通戦略(基本計画)」を策定した。

この総合交通戦略の基本計画では、仙台市内の泉中央地区から富谷市内の明石台、成田を経て大清水に至るルートを「基幹公共交通軸」と位置付け、第1ステップ(短中期)と第2ステップ(長期)の2段階に分けて公共交通の整備を図るものとした。

第1ステップでは既存のバス路線を活用し、分かりやすさの向上や路線の維持強化を図る。続く第2ステップでは「明石台地区~泉中央駅間の新たな公共交通軸の導入」を挙げ、地下鉄かガイドウェイ・トランジット(ガイドウェイバス)の整備を想定するものとした。

総合交通戦略で定められた基幹公共交通軸(薄赤)。このうち泉中央~明石台間(赤)に地下鉄など軌道系公共交通を整備することが想定されている。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット編集部】

これまでの検討では、地下鉄を泉中央~明石台間3.4kmに整備する場合、概算事業費が400~600億円。今回のPFI方式の検討は、この膨大な事業費を減らすことが目的だ。運行経費は1時間あたりの運行本数をピーク時6往復、オフピーク時3往復と仮定した場合、年間で約4億3000万円としている。事業として成立するために必要な乗客数は、1日約1万6200~1万8700人。仙台市方面への鉄道・バス利用者(約7800人)のほか、自動車から約8400~1万900人の利用転換を図る必要があるとしている。

ガイドウェイバスの場合、泉中央~明石台間に高架橋の専用軌道を整備し、路線バスの車両が乗り入れて運行することが考えられている。専用高架軌道の整備費は約170億円。

既存のバス路線の強化を図る第1ステップは、2024年まで基軸強化の検討を実施。これと並行して2029年まで運行強化や分かりやすさの強化を行う。軌道系公共交通を整備する第2ステップは、2024年までに基本計画を策定し、2025年から2029年まで実施計画を策定する。事業化は2030年以降を目指す。

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