東葉高速鉄道「新駅」予定地を歩く 船橋市内の東海神~飯山満、一歩前進だが課題も



東葉高速線の東海神~飯山満間に設けられる新駅の予定地。いまは田園地帯だ。【撮影:草町義和】

東葉高速鉄道東葉高速線の東海神~飯山満間(千葉県船橋市)には、新駅を整備する構想がある。9月には船橋市の都市計画審議会が新駅の整備を含む都市計画や土地区画整理事業を承認。一歩前進したが課題も残されている。東海神駅から新駅の予定地まで歩いてみた。

田園地帯に浮かぶ高架橋

11月3日の13時少し前、東京メトロ東西線~東葉高速線の直通列車に乗って東海神駅に到着。島式ホーム1面2線の地下駅だ。地上に出ると、小屋のような駅の出入口が民家に囲まれている。駅名標が設置されていなければ、鉄道駅の出入口には見えない。

地下駅の東海神駅。【撮影:草町義和】
東海神駅の地上出入口。【撮影:草町義和】

ここから新駅の予定地に向け、東葉高速線に並行する道路を歩く。並行といっても東葉高速線は地下トンネルのため線路は見えず、周囲はごく平凡な住宅街。地下トンネルの真上の敷地はコンビニエンスストなど商業施設が比較的多い。

東海神駅から新駅の予定地へ。東葉高速線に並行している道路の周囲は住宅街だ。【撮影:草町義和】

東海神駅から1kmほど歩いたところで東葉高速線の線路は地上へ。防音シェルターで囲われた部分を経て、高架橋へと移っていく。このあたりから周囲は都会の住宅街から田園地帯へと急速に変わり、空き地や田畑が目立つようになった。

東葉高速線は東海神駅から1kmほど先で地上へ。防音シェルターの先で高架橋につながっている。【撮影:草町義和】

しばらくして目の前に海老川が姿を現し、この少し先が新駅の予定地。住所としては船橋市の東町・米ヶ崎町の境界で、距離は東海神駅から約2.1km、飯山満駅から約1.9kmとみられる。事業計画案の図面を見る限り、相対式ホーム2面2線の高架駅になるとみられる。仮に新駅が実現した場合、東京都心の大手町駅からの所要時間は快速で最短30分くらいだろうか。

南側は畑が広がっていて人家が少なく、ここに鉄道駅を作っても利用者がどのくらいいるのか、やや不安になるほど。逆にいえば支障する建造物が少なく、新駅を建設しやすいともいえる。

新駅の予定地。南側は畑などが広がっている。【撮影:草町義和】

一方、高架橋の北側にある道路は交通量が比較多く、両脇にはレストランのチェーン店やコンビニエンスストアなどの商業施設が並んでいて、やや雑然としている。この道路のさらに北側は田畑が広がっているが、一部は休耕地で雑草に覆われていた。

新駅予定地の北側を通る道路。商業施設が並びやや雑然としている。【撮影:草町義和】

医療センター「移転構想」で浮上

新駅の構想は古くからあった。海老川上流地区の土地区画整理事業が構想され、東葉高速線が開業した1996年、土地区画整理事業の組合を設立するための準備委員会が発足。船橋市の東町・米ヶ崎町・夏見にまたがる約80haの範囲に住宅地や商業施設などを整備し、その一環として新駅を設けることが考えられた。

東葉高速線の新駅の位置。医療センターが新駅の北側に移転する。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット編集部】

翌1997年度には組合運営や事業施行の業務代行予定者として東京の開発業者が選定されたが、地権者の同意を得られず計画は難航。2009年度には業務代行予定者が正式に撤退を表明した。

2010年度には民間事業者から事業参画の申し入れがあり、2011年度に事業協力者が決定。再び動き出したかのように思えたが、協力者が示した基本構想案を準備委員会が承認せず、また暗礁に乗り上げた。事業がなかなか実現しないこともあって休耕地や耕作放棄地が増えたほか、小規模な宅地開発や墓地の造成など無秩序な開発も進んだ。

駅の北側に広がる農地。一部は休耕地で背の高い雑草に覆われている。右奥に見えるのが現在の医療センター。【撮影:草町義和】

転機を迎えたのは2015年。船橋市の松戸徹市長が海老川上流地区に市立医療センターを移転させることを表明した。医療センターは土地区画整理事業のエリアから北に外れた金杉町にあるが、施設の老朽化などの問題を抱えていた。そこで船橋市は海老川上流地区に新しい医療センターを整備し、医療・健康をテーマとした「メディカルタウン」としてまちづくりを行うことを構想した。

翌2016年にはまちづくり基本構想の素案がまとめられ、検討が本格化。2018年には海老川上流地区の地権者が土地区画整理組合の設立準備会を設立し、具体化に向けた動きも進んだ。そして今年2021年9月15日の船橋市都市計画審議会で、関係する都市計画の変更や土地区画整理事業などが原案通り承認された。

今後は来年2022年1月にも千葉県の都市計画審議会が開催される見込み。同年2月には土地区画整理事業の組合も設立される見込みだ。事業費は土地区画整理事業が約192億円で、このうち少なくとも116億円を船橋市が負担する。新駅の事業費は約65億円。請願駅(地元負担を条件に地元の要望に応じて建設する駅)のため、こちらは船橋市が全額負担する見込みだ。

新駅と医療センターの「距離」

現在のスケジュール案では、土地区画整理事業は2023年度から2030年度まで造成工事を実施。医療センターは2024年度から工事に着手し、2026年度中には開院の予定だ。新駅は2022年度から2023年度に設計を実施し、2024年度から工事に着手。2026年度末に開業予定としている。

ただ、新駅を含む土地区画整理事業は今年2021年9月に開かれた船橋市の都市計画審議会で原案通り承認されたものの、課題も示した。

医療センターの移転候補地は、2019年の事業計画素案では新駅の北側とされていた。今回承認された事業計画案では、医療センターの移転予定地がさらに北側へ移動。新駅と医療センターのあいだに「医療健康拠点施設用地」を設けるものとした。

土地区画整理事業の事業計画素案(左)と事業計画案(右)。医療センターの予定地が新駅から離れた場所に変更された。【画像:船橋市】

素案と事業計画案の図面で比べてみると、新駅~医療センター間の距離は素案では最短で約120mだったが、事業計画案では最短約460mで300mほど長くなる。病院を訪ねる人の多くは健康に何らかの問題を抱えているのだから、駅から病院までの歩行距離は短ければ短いほどいいはずだ。

実際、今年2021年9月の都市計画審議会でも、原案通り承認しつつ「素案で予定されていた建設予定新駅の北側直近が市としてふさわしい位置と思っているので、現在の案の医療センター位置については賛成しかねる」との意見が付された。

船橋市の都市政策課や都市計画審議会の会議録(2021年3月29日)によると、医療センターの早期整備や救急車の出入りルートなどを総合的に勘案した結果、医療センターの位置を変更したという。医療健康拠点施設用地には、小規模なクリニックモールやスポーツジムなどの整備を想定している。

新駅予定地付近の線路。相対式ホーム2面2線の高架駅になるとみられる。【撮影:草町義和】

船橋市は新駅北側に設ける公園から医療センターに向かう歩行者動線を検討しているほか、新駅と医療センターを結ぶ路線バスの運行も想定し、バス事業者との協議を進めているとしている。長くなったアクセス距離のデメリットをどこまで緩和できるか、今後の検討結果が注目されるところだ。

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