西濃鉄道「改善指示」発出 施設変更の法手続せず、輸送障害届け出ず、検査周期超え



国土交通省の中部運輸局は10月20日、西濃鉄道(岐阜県大垣市)に対し安全管理体制が構築されていないとして改善指示を発出した。

西濃鉄道の貨物列車。【画像:Alt_winmaerik/wikimedia.org/CC BY-SA 3.0】

中部運輸局によると、西濃鉄道の市橋線で規定通りの運行が行われていないとの情報が寄せられたのを受け、7月に保安監査を実施。その結果、鉄道事業法に基づく手続きが行われておらず、実施基準で定められた規定も実施されていないなどの問題が確認された。

乙女坂駅構内で実施された分岐器交換や枕木のプレストレストコンクリート(PC)化では、鉄道事業法に基づく施設変更の手続きが行われていなかった。また、2018年から2021年にかけ3件の輸送障害が発生しているにもかかわらず、届出書を提出していなかった。

線路変位検査では整備基準値を超えている部分について、内規に基づく必要な整備を行っていなかった。線路の巡視は4日に1回以上実施することが実施基準で定められているが、実際には一部の区間で巡視の間隔が4日を超えていた。また、実施基準で規定されている運転専用電話を撤去、廃止していた。

車両関係では、2日を超えない範囲で列車検査を行うものとしていたが、一部の列車は検査周期が2日を超えていた。重要部検査では動力発生装置の機関本体の分解検査と探傷検査を行っていなかった。

運転関係では、駅長などによる出発合図を行っておらず、機関士も出発合図を受けずに列車を出発させていた。ブレーキテストはJR貨物の機関車から西濃鉄道の機関車に付け替えた際に行っていなかった。

市橋線の閉そく方式はスタフ閉そく式だが、2005年4月頃から今年2021年4月12日までのあいだ、ほとんど施行していなかった。

中部運輸局は西濃鉄道に対し安全管理体制が構築されているとはいえないとし、現場の状況を的確に把握する体制の整備や、現場の業務の実施状況の定期的な検証、鉄道係員への必要な教育・訓練を適切に行うなどの改善を指示した。

西濃鉄道はJR東海道本線美濃赤坂支線の美濃赤坂駅から2.0kmの猿岩駅を結ぶ貨物線の市橋線を運営。現在は美濃赤坂~乙女坂間の1.3kmのみ、近隣の山で産出される石灰石を運ぶ貨物列車が運行されている。2016年には脱線事故が発生した。

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