三菱電機「不正検査」鉄道各社、確認に追われる JR九州の空気圧縮機は12台が該当



空気圧縮機の例。三菱電機長崎製作所で不正な検査が行われていた。【画像:三菱電機】

三菱電機の長崎製作所(長崎県時津町)で製造された鉄道車両用の空調装置などで不正検査が行われていた問題で、各地の鉄道・軌道事業者は確認に追われている。

JR九州が7月2日に明らかにしたところによると、同社の車両に設置されている空調装置の総数は約2170台で、内訳は新幹線が約270台、在来線が約1900台。このうち三菱電機製は新幹線が約270台、在来線は約750台という。

JR九州に納入されている三菱電機製の空調装置はすべて同社の長崎製作所製だが、JR九州は「検査不正に該当する製品は、調査中と三菱電機より報告を受けています」としており、不正検査を受けた空調装置の数は明らかになっていない。

空気圧縮機も一部、不正検査を受けた製品が納入されていた。JR九州によると、三菱電機は当初、空気圧縮機は今回の検査不正には該当しないとJR九州に伝えていたが、7月2日になって一転。JR九州に納入されている三菱電機製の空気圧縮機110台(新幹線49台、在来線61台)のうち、在来線車両で使用している12台が今回の検査不正に該当するとの説明を受けたという。

JR九州は今後の対応について、三菱電機からの詳細な調査結果を受けて判断するとしている。

三菱電機の不正検査は6月29日に発覚した。同社の説明によると、空調装置の試験では、冷暖房の能力・消費電力試験を規定の温度・湿度の条件下で行わなければならないところ、常温状態の工場内で試験を実施。防水試験は完成品で降水量200mm/h相当以上の試験を行う必要があるが、実際は主枠の水密検査で判断していた。ほかにも絶縁抵抗・耐電圧の試験などを一部省略していた。空気圧縮機の検査では一部の検査を省略し、先行機種のデータを使って成績書を作成するなどしていた。

三菱電機は6月初旬に検査の自動化・IT化を図るため、長崎製作所内で空調装置の検査工程の調査を実施。6月14日に空調装置の検査に不正があったことが判明した。さらに調査を進めたところ、6月28日には空気圧縮機の検査でも不正があったことが分かったという。

三菱電機のこれまでの調査では、1985年から2020年にかけ約8万4600台の空調装置を約80社に納入。空気圧縮機もここ15年間で約1500台を約20社に納入したという。同社は調査結果と再発防止策を9月に公表する方針。杉山武史社長は7月2日、社長を辞任することを表明した。

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