JR東日本は経営体質の抜本的強化策として、ワンマン運転の拡大や電化路線の非電化路線への移行、複線路線の単線化など、運行体制や設備の「スリム化」を進める。同社が2020年度決算の説明資料で明らかにした。
ワンマン運転は2020年度に内房線や外房線、鹿島線、男鹿線、水戸線に導入。2021年度もワンマン運転のさらなる拡大に向け、車両や地上設備の整備を進める。また、2021年度はE7系の回送列車で自動運転の実証実験を実施する。自動列車運転装置(ATO)の導入線区の拡大も目指す。
サービス面では2021年度に「ポストコロナに向けた輸送ダイヤの検討」「地方における適切な輸送モードの検討」の実施を挙げており、一部の線区で列車の減便や鉄道廃止・バス転換の検討を進めるとみられる。このほか「柔軟な運賃・料金体系の検討」を掲げており、時間帯別運賃の導入などが検討されるとみられる。
車両投資・運用は「延命工事等により車両の取替周期を長期化」「保有車両数の削減」を2021年度の取り組みとして挙げており、2021~2025年度の車両投資額は2019年度の計画に比べ300億円削減するという。
設備のスリム化も図り、2027年度は2019年度に比べ30億円のコスト削減を目指す。電車をハイブリッド車などに置き換えることで架線や変電設備などを撤去し、電化路線を非電化路線に移行。複線の路線でも単線化などにより線路や信号設備などを撤去することを検討する。駅設備はチケットレス化を見据えて券売機や改札機の見直し・削減を実施。ホーム設備の仕様の見直しや削減も行うという。
JR東日本は4月28日、2020年度決算を発表。新型コロナウイルスの影響で鉄道事業の収入が大幅に減少した。連結ベースでは、売上高が前年度に比べ約4割減の1兆7645万8400万円だったのに対し、営業損益は5203億5800万円の赤字。当期純損益は5779億円の赤字だった。
同社が通期決算で最終赤字となったのは、1987年の国鉄分割民営化後では初めて。新型コロナウイルスの影響による厳しい経営環境は今後もしばらく続くことは確実で、JR東日本は設備の縮小などによる抜本的なコスト削減を推進するとみられる。