東北・上越新幹線「実物大模擬設備」整備 大規模改修に向け「劣化した線路」も再現



JR東日本は3月3日、約10年後の大規模改修を控えた東北新幹線・東京~盛岡間と上越新幹線・大宮~新潟間について、「実物大模擬設備」を使って大規模改修に向けた技術開発を進めると発表した。

JR東日本総合研修センターの「実物大模擬設備」。【画像:JR東日本】

実物大の模擬設備はJR東日本総合研修センター(福島県白河市)の敷地内に構築。面積は約1万1000平方mで、コンクリート橋(約80m)とトンネル・土工設備(各約30m)で構成される。線路はコンクリート橋の約70mと地上の約105mに敷設された。

コンクリート橋では、調査・作業に用いる機械やオープンイノベーションを活用して選定した改修材料の開発を進める。再現した設備の一部では、防音壁の取替を想定した材料の開発や改修作業の効率化を検討する。

トンネル内の軌道にはカーブ区間を再現できる装置を設置し、複数の条件下でも施工可能な機械の開発や操作者の訓練を行う。土工設備では改修工法の開発や効率化を検討する。

線路については、スラブ板下面と路盤面のあいだにある緩衝材が劣化し、これにより隙間が生じた状態を再現。スラブ板の上面から隙間を把握する調査手法の開発を進める。また、劣化した緩衝材やレール締結部の改修工法・機械の開発にも活用するという。

このほか、大規模改修に向けて3次元点群データの利活用も検討し、工事情報管理の簡素化と質的向上を目指す。JR東日本は「広範囲かつ膨大な数量の高架橋やトンネルといった既設構造物への施工に3次元点群データを適用した事例がない」とし、実物大模擬設備を使って効率的なデータの取得や利活用の方法を検討する。また、電化柱の耐震補強工事に向けた工法などの技術開発でも実物大模擬施設の活用を検討するという。

東北新幹線・東京~盛岡間は1982年から1991年にかけ開業。上越新幹線の大宮~新潟間は1982年に開業した。最初の開業から40年近くが経過しており、施設の大規模改修が必要な時期に差し掛かっている。このためJR東日本は2016年、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づく大規模改修引当金積立計画を国土交通大臣に申請して承認された。

開業から50年近くになる2031年度より大規模改修に着手する方針で、費用は2031年4月から2041年3月までの10年間で1兆406億円。引当金は3600億円で、積立期間は2016年4月~2031年3月の15年間だ。JR東日本は自走できる鉄筋探査ロボットの開発や、現在は人力で行っているスラブ下緩衝材の改修の機械化などの開発も実物大模擬設備を活用して行うとしている。