昔ながらの雰囲気漂う旧型客車を機関車がけん引して走る台湾の普通列車「普快車」が、12月22日限りで運転を終了する。鉄道プレスネット編集部は12月19日、残りわずかの運転となった普快車に乗った。

普快車は現在、台湾南部の西海岸と東海岸を横断する南廻線・枋寮~台東間の98.2kmを約2時間で走っている。編集部は台東発16時15分の南行枋寮行き普快車に乗車。通常は客車3両編成をディーゼル機関車がけん引しているが、ホームに入ってきた普快車は3両増結した客車6両編成だった。


客車は6両のうち5両がインド製で、ボックスシートとロングシートを組み合わせたセミクロスシート。残り1両は、かつての日本国鉄を走っていた「スハフ43形タイプ」のクロスシートで、編成の一番後ろに連結されている。ドアは手動で、日本国鉄の旧型客車と同じだ。



普快車は定時に台東駅を発車。昨年2019年に乗ったときは1両につき10人くらいだったが、今回は「最後の普快車」目当ての客が大勢いた。もっとも、増結のおかげで座席がほぼ埋まる程度。家族連れが多く、鉄道マニアとおぼしき人の姿は少なかった。

冷房装置は搭載されていない。窓を開けて流れる風を受け、景色を眺めながら駅弁を食べ、ビールを飲む。こうした鉄道旅行は、いまの日本の鉄道では味わえなくなった。


最後尾のデッキは、ほかの車両と連結したときに通路になる部分に扉が設置されておらず、「開け放し」の状態。これもまた昔懐かしい日本国鉄の客車列車とよく似ている。
転落防止のための棒こそ設置されているが、足元から天井まで細長い空間が広がり、後方に流れていく線路がよく見える。ある意味「展望室」のようなスペースになっており、撮影ポイントとして人気の的になっていた。


太麻里駅には16時46分に到着。北行の台東行き客車急行「キョ(くさかんむりに「呂」)光号」と交換するため5分停車する。大勢の乗客がホームに出て即席の「記念撮影タイム」に。観光列車のように和気あいあいとした雰囲気だ。


進行方向左側には雄大な太平洋が広がる。とくに先日、線路改良工事でトンネルから高架橋に切り替わった区間では荒波が間近に見え、迫力のある車窓が展開された。

途中駅では運転終了を惜しんでか、普快車に手を振る人が多い。いつしか日が暮れて、車内は「夜汽車」のような雰囲気に。列車は18時22分、定刻で枋寮駅に到着した。
台湾の鉄道路線を運営する台湾鉄路管理局では、電車や気動車による普通列車を「区間車」、機関車が客車をけん引する普通列車を「普快車」と呼んでいる。日本では2001年、機関車がけん引する定期運転の普通列車が消滅したが、台湾でも電車や気動車の導入に伴い普快車が減り、南廻線・枋寮~台東の1往復だけ残っていた。
台湾鉄路は南廻線の全線電化にあわせ、12月23日にダイヤ改正を実施する予定。同時に最後まで残った普快車が廃止される。普快車で使われている旧型客車は改造され、将来的には観光列車として使われる予定だ。

一方、高速電車タイプの特急列車「プユマ」が新たに南廻線での運転を開始。高雄~台東間の所要時間が最大で27分短縮されるほか、高雄~花蓮間も最大39分短縮される。
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