交流・直流の両方走れる国鉄電車「415系」JR九州だけに 最後の路線は「関門」か



1987年の国鉄分割民営化から30年以上が過ぎ、国鉄時代に製造された車両もかなり減った。JR西日本の北陸エリアとJR九州の普通列車を中心に運用されている415系電車も、その一つ。JR西日本の415系はまもなく引退し、残るはJR九州の所有車両のみとなる。

JR九州の鹿児島本線を走る交直両用電車の415系。【撮影:鉄道プレスネット】

415系は1971年にデビュー。先頭部は、先頭から側面に回り込む窓(パノラミックウィンドウ)を採用。側面は乗客が乗り降りするドアを片側3カ所に設けている。車内の座席はボックスシートとロングシートが混在した、セミクロスシートになっている。

車内外を見る限り、同時期に製造された国鉄電車の113系や115系などとよく似ているが、113系や115系が直流電化路線のみ対応しているのに対し、415系は直流電化路線と交流電化路線の両方に対応しているのが特徴だ。

415系はセミクロスシート。同時期に製造された113系や115系と似ている。【撮影:鉄道プレスネット】

かつての国鉄線は直流方式で電化されたが、のちに送電コストを抑えられるなどの利点がある交流方式が導入され、新幹線や北海道・東北・北陸・九州の在来線が交流方式で電化された。このため、直流電化と交流電化の両方に対応して直通運転できる交直両用電車が必要になり、特急用の485系電車などが開発された。

415系は、「近郊型」と呼ばれる普通列車用の交直両用電車。直流1500Vと交流2万V/50Hz、交流2万V/60Hzの3電源に対応し、国鉄在来線の電化路線なら、基本的にどこでも走ることができる。この利点を生かし、交流と直流の境界があるエリアを中心に運用されてきた。

パンタグラフを搭載した415系のモハ414形。パンタグラフのほかにも交流電気に対応するための装置が多数搭載されており、碍子も大きい。【撮影:鉄道プレスネット】
JR西日本・JR九州の境界駅(下関駅)で直流電車の115系(右)と並ぶ415系。先頭部の屋根上に検電アンテナ(赤矢印)が設置されている。【撮影:鉄道プレスネット】

そのため、電気関係の仕様は直流電車の113系や115系とは異なる部分が多い。たとえばパンタグラフの周辺には、大きな碍子(がいし)など多数の部品が設置されているのが見える。交流2万Vという高電圧を取り扱うため絶縁対策を徹底しなければならず、碍子を大きくして絶縁の間隔を確保したり、回路の遮断装置などを搭載したりしているためだ。また、先頭車の屋根上には、架線に流れる電気の種類を検知するためのアンテナ(検電アンテナ)が設置されている。

JR東日本の車両は引退済み

1987年の国鉄分割民営化時点では、JR東日本が247両、JR九州が185両の415系を保有していた。このうち1986年以降に製造された車両(1500番台)は、車体にステンレスを採用するなどして車内外のデザインが大きく変わっている。また、JR西日本は1990年から1991年にかけ、直流電車の113系に交流機器を搭載して415系に改造した車両(800番台)を導入した。

JR東日本では、取手駅付近を境に電化方式が直流と交流に分かれる常磐線などで415系が運用されていたが、E531系電車への置き換えが進み、2009年までに1500番台の一部を除いて引退。2016年には1500番台も含め全車引退した。

JR東日本で運用されていた415系1500番台。JR九州では従来型の415系とともに現在も運用されている。【撮影:草町義和】

JR西日本の800番台は、今年2020年4月1日時点で27両が残り、IRいしかわ鉄道線(交流)とJR七尾線(直流)を直通する列車で使われている。しかし今月10月3日、七尾線向けに開発された新型車両の521系100番台電車がデビュー。来年2021年春には七尾線の普通列車が521系100番台に統一される計画で、これに伴い415系800番台は引退する。

七尾線用の415系800番台。【撮影:草町義和】

JR九州は今年4月1日時点で、415系を160両(1500番台を含む)保有している。同社発足時点より25両減っているが、JR東日本から譲り受けた車両もあり、まだまだ多数の415系が現役だ。本州と九州をつなぐ関門トンネル区間(山陽本線・下関~門司間)や鹿児島本線、日豊本線で運用されている。

とはいえ、製造から40年以上が経過した車両が多いため、昨年2019年から新型車両の821系電車の運用が始まり、415系の置き換えが本格的に始まっている。

「関門415系」更新には大きな課題が

ただ、821系は交流専用の電車。415系が現在運用されている路線のうち、関門トンネル区間は直流方式で電化されているため走れない。また、交流と直流の境界点である門司駅のホームがある部分は交流電化されていて、駅構内の北外れ(下関寄り)に交流と直流の境界があることから、交流電車と直流電車を駅で乗り換える方式を採用するのも難しい。

JR西日本・JR九州の境界で直流電化されている下関駅。ここに交流専用電車が乗り入れることはできない。【撮影:鉄道プレスネット】

JR九州は現在、新型の交直両用電車の開発・製造を発表しておらず、415系が引退したあとの関門トンネル区間の車両をどうするかについても、明らかにしていない。そのため、415系が最後まで走る区間は山陽本線の関門トンネル区間になるとみられる。

老朽化が進んでいる以上、関門トンネル区間だろうとなんだろうと、いつかは415系を新型車両に置き換える必要がある。ただ、交直両用電車は交流専用や直流専用の電車に比べて高コストという課題を抱えており、そう簡単には新型車両に更新できない。

821系が415系の更新用として開発されたにもかかわらず交流専用となったのも、1カ所しかない交流・直流の境界のために高コストな交直両用電車を導入するのは、経営上厳しいという判断があったためだろう。そのため、JR九州は別の動力方式の採用も視野に入れ、関門トンネル区間の次期車両の検討を行っている可能性がありそうだ。

蓄電池電車のBEC819系「DENCHA」。走行用電力を貯蔵する蓄電池を搭載しており、走行中に架線から電気の供給を受けなくても走れる。【撮影:草町義和】
電気式気動車のYC1系。ディーゼルエンジンなどの内燃機関を使う気動車は、もともと架線からの電気供給がなくても走れる。【画像:JR九州】

JR九州は近年、蓄電池電車のBEC819系や電気式気動車のYC1系など、新方式の車両を導入している。これらの車両は走行中に架線から電気の供給を受ける必要がなく、交流・直流の境界にも対応する必要がない。こうした車両を関門トンネル区間に導入することも、検討されているのだろうか。

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