京成電鉄のレア車「ターボ君」いまも現役 「全部先頭車」の3600形4両編成



京成電鉄の車両としては初めて軽量オールステンレス構造の車体を採用した、3600形電車。デビューから40年近くが経過して新型車両への置き換えが進んでおり、現在運用されているのは10両(6両編成1本と4両編成1本)のみとなった。

京成電鉄3600形の「ターボ君」こと第3668編成。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

このうち6両編成の第3688編成は8月1日、「リバイバルカラー車」として運用を開始。窓の下に「ファイアーオレンジ」と呼ばれる赤い帯1本を配し、デビュー当時の姿が復元された。京成線の駅や線路脇では、1編成しか存在しないレアなリバイバルカラー車を撮影する鉄道マニアの姿を多数見かけるようになった。

これに対して4両編成の第3668編成は、車体のデザインが1991年以降のデザインのままで、特段の変化はない。ここ1カ月ほど、京成高砂~京成金町間2.5kmを結ぶ金町線(東京都葛飾区)で第3668編成を何度か見たが、この編成を撮影している鉄道マニアの姿はあまりみかけなかった。

「中間先頭車」はテールライトなど撤去

しかし、この第3668編成こそ、京成の現役車両のなかではレア中のレアな存在。京成電鉄の社員や鉄道マニアが、この編成のことを「ターボ車」「ターボ君」というユニークな名前で呼んでいることからも、どこか特殊な存在であることをうかがわせる。

実際に第3668編成「ターボ君」を見てみると、ちょっと変なところがある。中間の2両にも運転台が設置されており、編成中すべての車両が「先頭車」なのだ。

中間の2両にも不要なはずの運転台を設置。車両の合間から運転台の窓とヘッドライトが見える。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

編成を分割して2両編成でも運用できるようにしているのかと思ったが、よく見るとテールライトやワイパーを撤去した痕跡があり、これでは先頭車として使うことはできない。

運転台の窓の先にも車両が連結されているのが見える。【撮影:鉄道プレスネット編集部】
テールライトやワイパーは撤去された痕跡が。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

運転台もかすかにほこりをかぶっており、長らく使っていないように思えた。

余った車両を新型レベルに改造

3600形は1982年から1989年にかけ、54両(6両編成9本)が製造された。京成の車両としては初の軽量オールステンレス車体。制御装置は界磁チョッパ制御、補助電源装置は静止形インバーター(SIV)で、速度を操作するためのハンドルはワンハンドル式を採用するなど、当時としては新しい技術を多数盛り込んだ。

8両編成だった頃の3600形。【撮影:草町義和】

1990年代後半、京成電鉄は一部の駅のみ停車する速達列車の輸送力増強を図るため、8両編成化を促進。6両編成の3600形も8両編成化することになり、1997年から1999年にかけ編成を組み替え、8両編成6本が組成された。

この組換は、6両編成9本のうち3本をバラし、中間車をほかの編成に増結する形で行われた。その結果、先頭車6両が余ることに。京成電鉄はこの余った車両を有効活用するため、おもに各駅停車の普通列車で使う6両編成を1本作ることにした。

ただ、3600形の先頭車は当然ながら運転台付きだが、モーターは搭載していなかった。そこで6両中4両をモーター付きの車両に改造。当時の京成電鉄の新型車両だった3700形電車に準じた機器類が取り付けられ、かご形三相誘導電動機やVVVFインバーター制御装置が搭載された。まず1999年2年までに4両の改造が完成して運用を開始。同年8月には残り2両もモーターなしの中間車として完成し、6両編成になった。

電気関係の機器類は1999年当時の新型車両レベルだったため、従来の3600形より加速性能が高いなどの特徴があった。そのため「ターボ車」「ターボ君」と呼ばれるようになったらしい。また、運転台は編成の中間に連結する車両も含め、撤去されなかった。そのため、中間車も含めすべての車両が「先頭車」、しかし中間の運転台は使用しないという、特異な編成になった。

金町線を中心に運行も「特殊な使い方」も

3600形は2017年以降に廃車が進んでおり、すでに8両編成の運用が終了。リバイバルカラー車の第3688編成は8両編成だったが、旧デザインの復元にあわせて中間2両を廃車にし、6両編成に短縮されている。

第3668編成「ターボ君」も2017年、モーターなしの中間車2両が引退し、再び4両編成に戻った。とはいえ、電気関係の機器類はそれほど古くなっていないため、3600形のなかでは最後まで残る編成になるかもしれない。

現在はすべての列車が4両編成で運転されている金町線を中心に走っており、1週間のうち4日程度は金町線を走っている。

現在の3600形「ターボ君」はおもに金町線を走る。【撮影:鉄道プレスネット編集部】
リバイバルカラー車も6両編成に短縮されている。【撮影:草町義和】

このほか、総合車両製作所(J-TREC)の横浜事業所で京成電鉄の新型車両が製造された際、新型車両のけん引車として使用されることがあり、横浜事業所から新型車両を引っ張って京急線と都営浅草線を走る。

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