近鉄「夢洲乗り入れ」実現する装置の試作品が完成 集電方式異なる地下鉄に直通



近鉄は5月23日、「可動式第三軌条用集電装置」の試作品が完成したと発表した。集電方式が異なる電化路線を直通運転するための装置。近鉄は地下鉄に乗り入れて統合型リゾート(IR)などの整備が構想されている大阪湾岸の夢洲地区への直通運転を目指す。

近鉄特急「ひのとり」。【画像:travelgrip24/写真AC】

可動式第三軌条用集電装置は台車枠下に設置。走行用レールの脇に給電用レールを設置した電化路線(第三軌条式)では、この装置のコレクターシュー(集電靴)が給電用レールに接触して電気を取り入れる。一方、車両屋根上のパンタグラフを使って線路上方の架線から電気を取り入れる電化路線(架空電車線式)では、集電靴が内側に引っ込むようにして収納される。

可動式第三軌条用集電装置の試作品(右)。台車枠下に設置(左)する。【画像:近鉄】

近鉄線から夢洲地区への直通運転を行う場合、近鉄奈良線の生駒駅から近鉄けいはんな線と大阪メトロが運営する地下鉄の中央線、同線の延伸区間となる北港テクノポート線(2025年開業予定)に乗り入れれば可能だ。しかし近鉄奈良線が架空電車線式なのに対し、近鉄けいはんな線~大阪メトロ中央線~北港テクノポート線は第三軌条式で集電方式が異なる。直通運転を行うためには、パンタグラフと第三軌条用集電装置の両方を搭載した車両を導入する必要がある。

直通列車の運行が想定される区間(太線)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット編集部】
大阪メトロ中央線。2本の走行用レールの脇に給電用の第三軌条が設置されている。【撮影:草町義和】
近鉄奈良線は線路の上方にある架線からパンタグラフを使って電気を取り入れる。【撮影:草町義和】

ただ、架空電車線式の路線の車両限界(車両の最大寸法の範囲)は通常、第三軌条式の車両限界に比べ車両下部の寸法が狭い。集電靴を固定した第三軌条用集電装置では、架空電車線式の路線を走行する際に線路脇の施設に集電靴がぶつかる可能性がある。このため、集電靴を収納できる可動式の集電装置が開発された。

可動式第三軌条用集電装置の展開時と収納時。【画像:近鉄】

開発には近鉄のほか、近畿車両とシュンク・トランジット・システムズ、シュンク・カーボン・テクノロジー・ジャパン、ニシヤマが参画。5月25~27日にインテックス大阪で開催される「鉄道技術展・大阪」の近鉄ブースでパネル展示が行われる予定だ。

近鉄は「夢洲と当社路線を結ぶ直通列車を実現し、夢洲から沿線各地に誘客することで、沿線地域の観光振興を図ってまいります」としている。

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