山口県岩国市は第三セクターの錦川鉄道が運営する錦川清流線について、少なくとも今後10年間は維持する方針を決めた。来年度2026年度から「みなし上下分離方式」を導入する。

岩国市は2023~2024年度、錦川清流線の今後のあり方として「現状維持」「公有民営上下分離」「みなし上下分離」「一部バス転換」「全線バス転換」の収支シミュレーションを実施。2023~2032年における経費などを試算した。
試算結果によると、岩国市の実質負担額が最も少ないのは「みなし上下分離」により鉄道を存続するケース(13億3019万円)。全線バス転換(16億5870万3000円)に比べ3億円ほど安く、現状の運営体制による鉄道存続(14億5339万円)と比べても1億円ほど安いとされた。
ただしこれは、バス転換の初期投資や鉄道廃止に伴う補助金の返還額(約4億円)が生じるのに加え、岩国市が引き継ぐ鉄道資産の所有権移転に伴う測量・境界確認経費が約1億6000万円必要になることを反映している。こうした諸条件を除いて運行費で比較した場合、岩国市の実質負担額は鉄道存続(みなし上下分離)より全線バス転換のほうが年間で5000万円ほど安くなると試算している。
一方、2025年度はクロスセクター効果の調査を実施。鉄道の維持により年間約1億円の効果があるとした。観光利用などによる経済効果に加え、鉄道の維持による行政経費の抑制効果(鉄道を廃止した場合のスクールバス運行費や地価の低下による税収減少などの回避)も1年間で2720万円に上るとしている。
こうしたことから岩国市は、みなし上下分離方式で鉄道を維持、存続することが「現時点で最も合理的」(福田良彦市長)と判断した。その一方、財政状況や利用者数の減少など錦川清流線を取り巻く状況は依然として厳しいことから、同市は10年後の2035年度をめどに改めて錦川清流線のあり方を検討するとしている。

錦川清流線はJR岩徳線の川西駅から分岐して錦町駅に至る32.7kmの路線。列車は岩徳線に乗り入れて岩国~錦町の38.3kmを結ぶ。1960年から1963年にかけて国鉄の岩日線として開業。1984年には利用者が少ないローカル線として廃止対象になった。1987年には国鉄分割民営化に伴い発足したJR西日本への暫定承継を経て錦川鉄道が経営を引き継ぎ、現在の線名に改称した。
輸送密度は国鉄時代の1977~1979年度で1420人。三セク転換後は減少が続き、2023年度は216人だった。このため存廃問題が浮上し、岩国市が今後のあり方について検討を行っていた。
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