室蘭本線の一部「最大3カ月無料」フリー切符と通勤定期券のモニター事業



JR室蘭線活性化連絡協議会・JR北海道の2者は、JR北海道が運営する室蘭本線の苫小牧・沼ノ端~岩見沢で「無料乗車」のモニター実証事業を実施する。7月1日~12月31日の期間中、最大で3カ月間無料で利用できるようにする。

室蘭本線の列車。【画像:JR室蘭線活性化連絡協議会】

実証事業は、苫小牧~岩見沢の1日フリー乗車券を無料で配布する「室蘭線沿線住民モニター」と、沼ノ端~岩見沢の範囲を発着駅とする1カ月または3カ月の通勤定期券を無料配布する「室蘭線通勤定期モニター」の2種類。利用可能期間は7月1日~12月31日で、利用後のアンケート回答が参加条件になる。

「沿線住民モニター」は沿線自治体(岩見沢市・栗山町・由仁町・安平町・苫小牧市)に住民登録がある18歳以上を対象に300人を募集。「通勤定期モニター」は沿線自治体在住で現在は自動車通勤している人を対象に30人を募集する。

室蘭本線は長万部~東室蘭~苫小牧~沼ノ端~岩見沢の211.0kmと東室蘭~室蘭の7.0kmで構成される鉄道路線。このうち長万部~沼ノ端と東室蘭~室蘭は都市間輸送を担う特急列車が運行されているが、沼ノ端~岩見沢の67.0kmは特急列車が運行されておらず沿線の過疎化も進み、利用者が少ない。

沼ノ端~岩見沢の輸送密度は2018年度が412人で2023年度は325人。JR北海道はが輸送密度200~2000人の線区を「利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区」(黄線区)と位置付けている。

室蘭本線・苫小牧~岩見沢のルート(黄色)。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

国土交通大臣は昨年2024年3月、JR北海道に対し「事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を発出。黄線区については「徹底した利用促進やコスト削減などの取組を行い、国による支援制度も活用しつつ、徹底的にデータとファクトに基づく議論を重ねる」などとし、2026年度末までに「事業の抜本的な改善方策を確実にとりまとめる」ことを求めている。

こうしたことから協議会とJR北海道は無料乗車のモニター事業を計画。沿線住民の鉄道利用促進に加え、生活利用・観光利用に対する課題の整理や通勤定期券の拡販が見込めるかどうかの調査を行うことにした。

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