山口県・美祢市・長門市・山陽小野田市・JR西日本で構成される「JR美祢線利用促進協議会」は5月22日に総会を開いた。災害の影響で全線運休中の美祢線について、同線を運営するJR西日本はバス高速輸送システム(BRT)で復旧するのが望ましいとする考えを示した。

協議会の復旧検討部会がまとめた検討結果の報告書によると、鉄道を復旧する案に加え、鉄道を廃止してBRTか路線バスを運行する案を検討。鉄道復旧の場合は従来通りJRが単独で運営する案と上下分離方式を導入する案、第三セクターに移管する案を検討した。
鉄道を復旧する場合、復旧費は58億円以上かかり、復旧期間は最短で10年程度。復旧後の運営費は年間5億5000万円以上かかるとした。JR単独で復旧する場合は復旧費と運営費をすべてJR西日本が負担することになる。
鉄道施設・土地を自治体が保有してJRが運行する上下分離方式では、復旧費を58億円とした場合に32億円が国の補助制度の対象に。国・自治体・JR西日本が10億6000万円ずつ負担する。残りの26億円は自治体とJR西日本の調整が必要だ。年間運営費は5億5000万円の場合でJR西日本が2億5000万円を負担し、3億円を自治体が負担するものとした。
BRT案は復旧期間が約3~4年で、専用道整備以外は2年以内。復旧費は鉄道より3億円以上安い55億円で、運営費も年間で3億円以上安い2億5000万円とした。国の補助制度を活用する場合、国・自治体・JR西日本がそれぞれ18億3000万円ずつ負担する。年間運営費はJR西日本が全額負担するが、補助制度の活用も想定する。

路線バス案は復旧期間が約1~2年で最も短く、復旧費も最小の9億6000万円。国の補助制度を活用する場合は国・自治体・JR西日本がそれぞれ3億2000万円ずつ負担する。年間運営費はBRT案と同じ2億5000万円でJR西日本が全額負担するが、補助制度の活用も想定する。
サービス面では1両あたりの定員が鉄道で約100人なのに対し、BRT・路線バスは大型バスで約80人に減少。厚狭~長門市の所要時間は鉄道が1時間4分なのに対し、路線バスは17分長い1時間21分とした。定時性は鉄道が定着運転率で92.9%、10分以上の遅延率で2.8%。路線バスは定着運転率が56.7%で大幅に低下するが、10分以上の遅延率では1.5%に抑えられるとしている。BRTは所要時間と定時性について具体的な時間を示さず「鉄道と同水準を目指す」としている。
専用道は1区間+「変動要素」
報告書で示されているBRT案は、貞任第5踏切~厚保駅(約4.2km)の1区間のみ専用道を整備することを基本にしている。運行本数は被災前の鉄道の約1.5倍とし、バス車両はディーゼル車を使用する。費用の内訳は専用道の整備が約45億円で、停留所などの整備が約7億円。車両購入が約3億円になる。
ただし「変動要素」として、さらに3区間での専用道の追加整備を想定。整備区間(費用)は厚狭~下河端第2踏切の1.2km(約16億円)、南大嶺~美祢の2.5km(約23億円)、長門湯本~城山踏切の4.6km(約36億円)としている。想定される全4区間の専用道を整備した場合、総費用は約130億円とみられる。

専用道を設けず通常の路線バスとして運行する案も、運行本数を被災前の鉄道の約1.5倍としてディーゼル車を使用。ただしバス車両を電気車に変える場合は約5億円の増額で、運行本数を被災前の鉄道と同程度とした場合は1億円の減額になる。

美祢線は中国地方西部の南北を縦断し、山陽本線の厚狭駅と山陰本線の長門市駅を結ぶ全長46.0kmのJR西日本の鉄道路線。非電化単線のローカル線で、輸送密度はコロナ禍が本格化する前の2019年度で478人、2022年度は377人だった。かつては石灰石などを運ぶ貨物列車が走っていて貨物輸送量も多かったことから、運賃上は幹線として扱われている。
2023年6~7月の大雨の影響で四郎ケ原~南大嶺の第6厚狭川橋梁が崩落するなど大きな被害が発生し、現在も全線が運休中。JR西日本は単独での復旧が困難とし、鉄道で復旧する場合は上下分離方式、鉄道以外の方法で復旧する場合はBRTが適当と主張していた。
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