学研都市線・JR東西線の京橋駅付近「地下化」再開へ 深さ変更、事業費1.5倍以上に



大阪市は片町線(学研都市線)・JR東西線の京橋駅付近を地下化する連続立体交差事業(連立事業)を再開する考えを固めた。この事業は予算を執行しない「事業休止(D)」に位置付けられていたが、5月14日に開かれた同市の建設事業評価有識者会議で、予算の範囲内で継続実施する「事業継続(B)」が妥当とされた。

事業休止が決まったころ(2014年)の京橋駅の学研都市線・JR東西線ホーム。【撮影:草町義和】

この連立事業は、学研都市線の鯰江踏切付近から京橋駅を経てJR東西線・大阪城北詰駅の手前まで約1.3kmを事業区間とし、線路を地下化するもの。学研都市線内にある3カ所の踏切(新喜多・馬の口・鯰江)を解消する。このうち鯰江踏切はピーク1時間の遮断時間が45分の「開かずの踏切」だ。

大阪市は現在の線路の位置より北側に地下線を整備する「別線地下化」と、現在と同じ位置で地下化する「現線地下化」の2ルートを検討。別線地下化のほうが工期が短く事業費が低くなるとし、別線地下化で整備する考えだ。

京橋駅付近の連続立体交差事業の平面図と縦断面図。【画像:大阪市】

京橋駅の地下ホームは大阪環状線との立体交差部に相対式2面2線で整備する。旧計画では周辺の都市計画道路や市道の高さなどの問題から物理的に2層構造にできないため、駅部は地下1階に線路・ホームを設ける1層構造で設計していた。

大阪市が今回示した計画では駅部の深さを変更。地下1階にコンコース、地下2階に線路・ホームを設ける2層構造にする。旧計画では北改札口から下りホームへの上下移動回数が現状より1回多い3回で利便性の低下が課題だったが、今回の計画では現状と同じ2回としている。

京橋駅付近の横断面図。旧計画では地下1層としていたが、今回の計画では地下2層とした。【画像:大阪市】

大阪市によると、まちづくり方針で都市計画道路の計画を見直すものとし、さらに市道の冠水対策として道路を高くすることになったことから、法規上認められている最大の勾配を用いて駅部の位置を限界まで下げ、2層構造にすることが可能になったという。

全体事業費は2015年3月の前回事業評価時点では約650億円だったが、今回は1.59倍の約1031億円とした。ルートや設備などの詳細検討に伴う見直しなどで79億円増えたほか、人件費・原材料費の高騰により212億円増加。さらに汚染土処分や地中障害物撤去など発生確率が高いと想定されるリスク分として90億円を追加した。負担割合は行政側が98.6%(約1017億円)で、残り1.4%(約14億円)は鉄道事業者の負担になる。

事業の必要性の目安となる費用便益比(B/C)は、2014年の前回評価が1.4だったのに対し、今回の評価では1.3に縮小。ただし周辺の道路整備も含めた場合は1.45に上昇した。

この連立事業は2000年度に着工準備が採択されたが、大阪市の財政状況の悪化などにより2014年度の事業評価で事業休止が決まっていた。大阪市は「近年、京橋駅周辺におけるまちづくりに関する機運が高まってきているとともに、大阪市内での事業中の立体交差事業の進捗が見られ、本事業の再開の目途がたってきたところ」としている。

大阪市は今後、関係機関との協議・調整を行い、事業着手に向けて早期の都市計画決定をめざす考え。2030年度の事業認可と2053年度の事業完了を想定している。

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