広島アストラムライン「値上げ」申請 一部区間据え置き、1日券は値下げ



アストラムラインを運営する広島高速交通は1月27日、旅客運賃の上限変更認可を国土交通省の中国運輸局長に申請した。認可された場合、広島高速交通は10月1日に運賃を値上げする。値上げ率は13.2%だが、実際に適用する運賃(実施運賃)は一部区間で上限額より安くする方針のため、実質的な値上げ率は12.8%になる見込み。

アストラムラインの列車。【画像:KUZUHA/写真AC】

普通旅客運賃の上限は各距離帯とも一律30円値上げする。初乗り(2km以内)は現行190円のところ220円に改定。12kmまでの区間は現行370円のところ400円になる。

実施運賃は12kmを超える区間で値上げ幅を抑える。15kmまでの区間は現行410円から実質20円値上げの430円、18kmまでの区間は現行460円から実質10円値上げの460円に改定。19kmまでの区間は現行の490円を据え置く。

定期旅客運賃の上限は1カ月の場合、12kmまでの区間で通勤定期が1410円値上げの1万5600円、通学定期が1090円値上げの1万2000円。19kmまでの区間は実施運賃の設定により現行額を据え置き、通勤定期が1万9200円、通学定期が1万4770円のままになる。

普通旅客運賃の現行額と上限額、実施額。【画像:広島高速交通】
定期旅客運賃の現行額と上限額、実施額。【画像:広島高速交通】

このほか、アストラムラインを自由に乗り降りできる「一日乗車券」は現行950円のところ50円値下げして900円にする予定。15kmを超える区間の利用促進を図る。

広島高速交通によると、アストラムラインは2023年度で収入が45億9800万円だったのに対し、支出は50億6900万円で4億7100万円の赤字。2026~2028年度の3年間平均は現行運賃のままなら8億2200万円の赤字だが、運賃を改定した場合は上限ベースで赤字額を1億8900万円に抑えられるという。

アストラムラインは広島市内の本通~広域公園前18.4kmを結ぶゴムタイヤ式の軌道交通。1994年に開業した。運賃値上げの申請は消費税率の引き上げにともなうものを除き、今回が初めてだ。

広島高速交通によると、コロナ禍の影響による旅客収入の減少に加えて老朽化した電気設備などの更新が必要。さらに人件費の増加や車両更新に伴う減価償却費や物価高騰による諸経費の増加が経営を圧迫している。このため運賃改定による収支改善が必要と判断したという。

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