日光いろは坂「新モビリティ」検討へ 栃木県知事「個人的には路面電車とケーブルカー」



栃木県の福田富一知事は1月7日、日光市の中心部と奥日光地域を結ぶ「新たなモビリティ」について、栃木県・日光市・東武鉄道の3者で検討する考えを明らかにした。来年度2025年度の当初予算案に調査費を計上する方針。

東武日光駅前で静態保存されている東武日光軌道線の電車。【画像:夏至の雪/写真AC】

福田知事は1月7日の新春記者会見で「まずは議論のスタートに向け、地元日光市と交通事業者の東武鉄道を含めた検討会を3月までに設置できるよう進めている」と述べ、「(2025年度は)奥日光地域への人や物の流れを分析するなど、新たなモビリティの導入に向けた基礎調査を行いたい」と話した。

運営体制は「運行を委託していく、あるいは運行を東武鉄道にお願いしていくということも当然出てくる」と述べ、上下分離方式を念頭に置いていることを示唆。工事費は「運行形態や方式、モビリティの種類も含め方向性が出れば、ある程度公表できる段階になる」として、現時点での目安などの明言は避けた。

日光市の中心部と奥日光地域は国道120号で結ばれている。その途中の山麓側(馬返)と山上側(明智平)は急勾配のヘアピンカーブが連なる「いろは坂」があり、とくに紅葉シーズンの交通渋滞が慢性化している。福田知事は昨年2024年11月の記者会見で、渋滞回避策としていろは坂を通り抜けるロープウェイの整備構想を披露。いろは坂の入口付近に駐車場を整備し、ここに自動車を駐車してロープウェイに乗り継ぐ案を示していた。

新モビリティの機種については「私個人としては、かつての路面電車、乗り継ぎケーブルカーだが、ロープウェイが最もふさわしいのではないか」としつつ「(栃木県・日光市・東武鉄道の)3者の合意点を見いだすことから当然スタートすべき。私の思いと2者の考え方を聞きながら方向性を定めていくことになると思う」と話し、3者との検討・調整のなかで機種を決めていく考えを示した。

1970年までに廃止された東武鉄道の日光軌道線(赤)と日光鋼索鉄道線(青)の位置。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

かつては国鉄(現在のJR)日光駅や東武日光駅がある場所から馬返まで東武鉄道の路面電車(日光軌道線)が走っており、馬返と明智平を結ぶ東武鉄道のケーブルカー(日光鋼索鉄道線)と連絡を図っていた。しかしいろは坂が2ルート化されるなど道路整備が進んだことから、1968年に日光軌道線が廃止。1970年には日光鋼索鉄道線も廃止された。

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