東海道新幹線・米原駅の駅弁業者が撤退「DNA残したくない」136年の歴史に幕



滋賀県米原市の食品業「井筒屋」は1月1日、駅弁事業からの撤退を発表した。同社はJR東海・JR西日本の東海道新幹線・東海道本線・北陸本線が乗り入れる米原駅で、「湖北のおはなし」などの駅弁を販売している。注文は2月28日納品分で終了。3月20日をもって駅弁事業から撤退し、駅弁販売136年の歴史に幕を閉じる。

東海道新幹線の米原駅。【画像:歩くと幸せ/写真AC】

井筒屋は撤退の発表のなかで「昨今の食文化は娯楽化がもてはやされ、誤った日本食文化の拡散、さらには食の工業製品化が一層加速し、手拵え(てごしらえ)の文化も影を潜めつつあります。そのような環境に井筒屋のDNAを受け継いだ駅弁を残すべきではないと判断致しました」と述べ、現在の食品業界や駅弁業界を暗に批判した。

また、米原駅が「もはや交通の要衝ではなくなった」としたうえで「構内営業者としての井筒屋の役割を十分に果たすことができ、業績を残すことができた」と述べた。駅弁の販売数の推移や会社の経営状況などは、駅弁事業撤退の理由としては挙げていない。

井筒屋は江戸時代末期の1854年、長浜船着場前の旅籠(はたご)として創業。136年前の1889年には東海道本線の全線開業にあわせて米原に拠点を移し、米原駅で駅弁の販売を始めた。ここ数年のコロナ禍による鉄道利用者の全体的な減少に加え、昨年2024年3月に北陸新幹線の金沢~敦賀が延伸開業。米原駅では東海道新幹線と北陸方面の在来線特急を乗り換える旅客が減少していた。

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