非鉄金属メーカーの東邦亜鉛は12月18日、事業の再編や撤退を含む事業再生計画を公表した。これに伴い、同社を荷主とする貨物列車、通称「安中貨物」も運行形態が変わる見通しになった。

事業再生計画では、亜鉛製錬事業は本年度2024年度末までに主要な亜鉛製錬設備を停止。2027年度以降、金属リサイクル事業に再編する。小名浜製錬所(福島県いわき市)は亜鉛焙焼炉と付随する硫酸工程を停止。安中製錬所(群馬県安中市)では亜鉛電解工程を停止する。
その一方、小名浜製錬所では既設の硫酸タンクを利用した濃硫酸の購入販売と薄硫酸の製造販売を継続し、今年2024年10月に開始した新規事業のLIBリサイクル事業に注力する。安中製錬所では環境ダストリサイクル熔融設備を新たに導入。亜鉛や鉛、銅、貴金属など各種金属品位の低い環境ダストを原料とした金属リサイクル事業と、各種メタルの製品加工業に再編する。
東邦亜鉛によると、亜鉛製錬事業は市況変動が大きく価格転嫁が難しい事業環境であるのに加え、エネルギー料金の高止まりや亜鉛鉱石の市況悪化で高コストな事業構造になっていた。また、設備投資を含む事業構造の見直しを進められなかったことから、経常赤字が継続していたという。
東邦亜鉛は小名浜製錬所から安中製錬所へ亜鉛焼鉱などを輸送するため鉄道を利用。専用の貨物列車が福島臨海鉄道線の小名浜駅からJR貨物の常磐線や武蔵野線、高崎線を経由して信越本線の安中駅まで運行されている。貨車は亜鉛焼鉱を運ぶための特殊なタンク車などを使用。鉄道マニアのあいだで人気が高く、「安中貨物」などと呼ばれている。

東邦亜鉛は鉄道プレスネットの取材に対し「小名浜から安中への亜鉛焼鉱の輸送は終了するが、それ以外にも運んでいるものがある。それらについては継続する方向」と回答。鉄道貨物輸送を引き続き利用する意向を示しつつ、亜鉛焼鉱を輸送する現在の形態での運行は終了することを示唆した。
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