明知鉄道のSL運行「条件付き可能」検討委が判断 従来案より運行本数増やす



明知鉄道でSL列車を運行する構想が次の段階に進む。岐阜県恵那市や明知鉄道などで構成される「SL復元検討委員会」は、SL復元運行を条件付きで「可能」と判断した。恵那市は今後、検討委の判断を受けてSL列車の運行の可否を最終的に判断する。

明知鉄道の明智駅構内で保存されているC12 244。【画像:読者提供】

検討委は昨年2023年11月に発足。これまで蒸気機関車の復元方法やSL列車の運行計画、地域活性化の取り組みなどを議論してきた。今年2024年11月21日の第6回会合ではこれまでの検討結果に基づき、「イニシャルコストを確保すること」「全般検査費用を確保すること」「経済波及効果を見出す事業であること」の条件を付けて「SL復元運行することは可能と判断する」とした。

ボイラー整備や車両整備、運転士育成などのイニシャルコストは10億7500万円を見込む。財源は国からの補助金を4億9750万円(47%)、岐阜県からの補助金を8000万円(7%)とし、残る4億9750万円(46%)を恵那市が負担する想定。恵那市は市税の負担をできるだけ減らすため、ふるさと納税やクラウドファンディングなど特定財源の確保を目指す。

SL列車で運用する鉄道車両の法定検査のうち、最も大がかりな検査になる全般検査の費用は3億円が見込まれている。このうち2億円を国と岐阜県、恵那市が明知鉄道への補助金として拠出。残る1億円は積立金やふるさと納税などによる特定財源、運賃収入で賄う想定だ。また、関係者が連携して地域活性化計画を取りまとめて観光・産業振興を図り、11億円の経済波及効果を見いだすことを目指す。

運行計画は3月に示された案から車両の定員や運行本数、運賃・料金などが変更された。蒸気機関車1両と旅客車2両の3両編成で運行するのは従来案と同じ。蒸気機関車はC12形の74・244号機の2両を復元する。旅客車は急坂でのトラブル発生で動けなくなる緊急事態を想定し、明知鉄道が所有する動力付きのアケチ10形気動車かアケチ100形気動車を使用する。

蒸気機関車が牽引する旅客車は明知鉄道の気動車を使用する。【画像:ティマ/写真AC】

気動車の定員は従来案(1両あたり96人)から大幅に減って1両40人(アケチ100形は48人)とし、4人掛けボックス席を設置。岐阜県産材を活用するなどの装飾を施した改装を行う考えだ。蒸気機関車の整備などを行う検修庫は、一定の敷地を確保できて将来的には転車台の検討も可能な岩村駅への設置を想定する。転車台を整備する場合はイニシャルコストが1億円増加する見込み。

営業日数は休日を中心に年間150日程度。運行本数は従来案では1往復としていたが「変則3往復」に増強。第1便を岩村→恵那、第6便を恵那→岩村で運行し、第2~5便は恵那~明智を往復する。

恵那→明智方向の運転は蒸気機関車が先頭に立って気動車を牽引。明智→恵那方向の運転は蒸気機関車が後ろ向きで先頭に立って牽引するか、気動車を先頭にして蒸気機関車が押す形で運行する。停車駅は恵那・岩村・明智の3駅。必要に応じて3駅以外の停車も検討する。

SL列車の運行時の構成。【画像:SL復元検討委員会】

運賃・料金の合計は1690円を想定。従来案の690円(恵那~明智の現行片道運賃と同額)から1000円の増額になった。乗車率は平均70%とし、年間の利用者数は約5万5000人、運賃収入は年間で8549万8000円を見込む。

検討委は今後、検討結果に基づき恵那市に意見具申する予定。これを受けて恵那市がSL列車の運行の可否について最終的に判断することになる。検討委は2025年度まで引き続き検討を進め、資金調達と事業継続のめどが立った段階(2026年度以降)で、恵那市や観光・経済団体、住民などが参加するSL推進組織(仮称)を設立することが考えられている。

第6回会合の会議要旨によると、10月に開かれた市民説明会では好意的な意見が多かった一方、「市の負担が増えて市民にしわ寄せがくるのでは」という費用面での懸念を示す意見も聞かれたという。こうした声にどう応えるかが今後の大きな課題になりそうだ。

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