熊本県内の公共交通が全国交通系ICカード「離脱」へ タッチ決済など導入



熊本県内で公共交通を運営する交通事業者は、運賃の支払い手段としてクレジットカードのタッチ決済などを導入する方針を決めた。一方で全国相互利用サービスに対応した交通系ICカード(全国交通系ICカード)は利用できなくなる。

熊本県内の路線バスを運行している産交バス。【撮影:草町義和】

熊本市などによると、熊本県内の5社(九州産交バス・産交バス・熊本電鉄・熊本バス・熊本都市バス)は来年2025年4月以降、タッチ決済を導入。クレジットカードをスマートフォンに登録して利用するモバイルクレジットや、肥後銀行が開発を進めているアプリ「くまモン!Pay」での決済も可能にする。1日乗車券などの企画乗車券はQRコード化し、スマホ上で購入して利用できるようにする。

一方、SuicaやSUGOCAなどの全国交通系ICカードはモバイルタイプも含め今年2024年12月中旬以降、利用できなくなる。地域限定型の熊本地域振興ICカード(くまモンのIC CARD)は引き続き利用できる。

2025年4月以降の運賃支払い方法の変更内容。【画像:熊本市】

タッチ決済などを導入済みの熊本市電も2026年4月から、5社と同様の運賃支払い方法への変更を予定。全国交通系ICカードは利用できなくなる。熊本市電の各種決済手段の利用割合(2023年度実績)は全国交通系ICカードが51%で、現金などが37%、くまもんのIC CARDが12%。利用者の半分以上が使っている全国交通系ICカードからの離脱は利便性の低下を招く可能性がある。

熊本市電は2026年4月から運賃支払い方法を変更する予定。【撮影:草町義和】

熊本市の大西一史市長は5月28日の定例記者会見で「(全国交通系ICカードは)機器類の更新だけでも12億円以上もかかる。非常に高コスト。12億円があれば(まもなく市電に導入される3両編成の新型車両を)3編成買える」「これを負担することで経営が非常に厳しくなって運行自体に悪影響を及ぼすことになれば、やむを得ないこと」との認識を示した。

その一方で大西市長は「ICカードを導入した当時に比べ決済手段が多様化している。ほかで代替できないことはない。一時的な利便性の低下は避けられないが、不便にならないよう交通事業者には努力してもらいたいし、行政としても機器更新などで支えていきたい」と述べた。

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