江ノ電「クレカでそのまま乗車」タッチ決済を導入 観光混雑の緩和目指す



江ノ島電鉄(江ノ電)はあす4月15日から、クレジットカードなどの「タッチ決済」を鉄道線の全駅に導入する。これに先立つ4月14日、江ノ電やクレジットカード会社などが報道関係者向けのデモンストレーションを江ノ島駅で実施した。

江ノ電の列車(左)とタッチ決済専用の改札機(右)。【撮影・加工:鉄道プレスネット】

従来の自動改札機とは別にタッチ決済専用の改札機を全駅に設置。江ノ島駅の場合、南側の改札口にある有人窓口の両脇にタッチ決済用の簡易改札機を設置した。駅員がいない北側の改札口は、ポール型のタッチ決済用改札機を従来型改札機のホーム側に設置。タッチ決済での乗車時には従来型改札機を通過してポール型改札機にタッチする形になる。

南側の改札口は窓口の両脇に簡易改札機を設置。【撮影:鉄道プレスネット】
北側の改札口にはポール型の改札機を設置した。【撮影:鉄道プレスネット】

デモンストレーションではテスト用のカードをタッチ決済用改札機にタッチすると、緑色のランプがすぐに点灯。続いて「ピッ」という音が鳴った。

クレジットカードをタッチすると緑色のランプが点灯して「ピッ」という音が鳴った。【撮影:鉄道プレスネット】
テスト用のカードで改札を通過してみたときの動画。【撮影:鉄道プレスネット】

ポール型改札機の寸法は幅が約20cmで高さは110cm。奥行きは上部(タッチ部)が約14cmだが下部は約12cmと少し薄くなっている。専用改札機を開発した日本信号によると、ホームが狭い江ノ電の特徴を考慮し、客の邪魔にならないようコンパクトにしたという。

タッチ決済に対応した国際ブランドのクレジットカードやデビットカード、プリペイドカード、スマートフォンで利用できる。対応するブランドは「Visa」「JCB」「American Express」「Diners Club」「Discover」。ほかに「銀聯」「Mastercard」も順次追加される予定だ。

江ノ電は訪日外国人観光客の人気が高く、コロナ禍前はインバウンド需要で切符売場や改札口に長い行列ができるなど観光混雑(オーバーツーリズム)への対応が課題になっていた。タッチ決済は外国人客が所持する自国のクレジットカードでそのまま乗車できるため、とくに切符売場の混雑の緩和に大きな効果があるとみられる。

江ノ電の嶋津重幹常務取締役は「切符売場の行列など、ほぼ解消できるのではないか。それにより係員が別のサービスや業務に対応できるので、我々としてもメリットがある」と期待感を示した。

江ノ島駅で交換する上下の列車。【撮影:鉄道プレスネット】

改札時の処理速度は交通系ICカードが0.2秒なのに対し、タッチ決済はルール上では0.5秒以内とされており、速度向上が課題といえる。三井住友カードの石塚雅敏Transit事業推進部長は記者会見で「日本の交通を考えると0.5秒は非常に遅いと考えている。(交通事業者向けの決済・認証プラットフォームを提供する)QUADRACと共同でシステムを作り上げ、実測で0.25~0.35秒になった。あとは改札機の配置の工夫などで対応できる」と話した。

首都圏の鉄道でタッチ決済を導入するのは江ノ電が初めて。東急電鉄もタッチ決済の実証実験を夏頃から始める予定だ。

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