関西大手私鉄の南海電鉄と同社グループの泉北高速鉄道は12月20日、両社の取締役会で経営統合することに基本合意することを決議した。2025年度早期の経営統合に向け検討を進める。
泉北高速鉄道は泉北ニュータウンを縦断する泉北高速鉄道線・中百舌鳥~和泉中央14.3kmを運営。中百舌鳥駅で南海高野線に接続して直通運転を行っている。
両社によると、沿線人口の減少やコロナ禍による生活様式の変化などで鉄道の需要減に歯止めがかからない状況。また、将来に渡って人材の確保が困難になることが確実視されている。そのため、鉄道事業と不動産賃貸事業という同種の事業を営む両社を経営統合することでグループ経営の効率化を図り、持続性の高い事業体制を確立するという。
経営統合後の運賃について、両社は現在検討中の運賃案の一例として難波(南海)~泉ケ丘(泉北高速)を示した。普通運賃は現在と同じ490円とすることを検討。一方で通勤定期運賃(1カ月)は現行2万3980円のところ5210円値下げの1万8770円、通学定期運賃(1カ月)は現行9670円のところ3610円値下げの6060円にすることを検討している。この案通りに実施されれば大幅な値下げだ。
泉北高速鉄道は今年2023年10月1日の運賃改定で子供運賃をICカードのみ一律50円に値下げしている。経営統合後の子供運賃をどうするかは両社とも今回の発表では明らかにしていない。両社は「初乗り運賃の二度払い解消等、地域からのこれまでの声に応えることができるよう検討を進めてまいります」としている。
両社は今後、南海電鉄が泉北高速鉄道を吸収合併する形での経営統合を前提に検討することを定めた覚書を締結する予定。2025年度早期の経営統合に向けて検討を進める方針だ。連結業績に与える影響は軽微という。
泉北高速鉄道は1965年、大阪府などが出資する第三セクター「大阪府都市開発」として設立。1968年から東大阪トラックターミナルを運営しており、1971年からは泉北高速鉄道線も運営している。
2013年には大阪府が大阪府都市開発の株式を売却することを決め、同年6月に売却先の公募を実施。米国投資ファンドのローン・スターや南海電鉄など3社が名乗りを挙げ、ローン・スターが優先交渉権を獲得した。
しかし、南海電鉄~泉北高速の乗継運賃を10円値下げするとしたローン・スターに対し、次点の南海電鉄は乗継割引を80円にするとしていたことが明らかになり、沿線の自治体や住民がローン・スターへの売却に反発した。
このため大阪府は最終的に、大阪府都市開発の株式を南海電鉄に売却することに。2014年、大阪府などが大阪府都市開発の株式を南海電鉄に売却し、社名も線名にあわせて現在の泉北高速鉄道に変わった。2022年4月には南海電鉄のグループ会社が保有する泉北高速鉄道の株式も南海電鉄が取得し、南海電鉄の完全子会社になっていた。
予定通り経営統合が行われた場合、南海電鉄がほかの鉄道会社と合併するのは、和歌山軌道線(1971年廃止)や貴志川線(和歌山電鉄に2006年譲渡)を運営していた和歌山電気軌道を吸収合併した1961年以来、64年ぶりになる。
大手私鉄ではこのほか、京成電鉄が2025年4月1日に新京成電鉄を吸収合併する予定。少子高齢化や人手不足、コロナ禍などの経営環境の変化で大手私鉄の再編が進みそうだ。
※誤記を修正しました。(2023年12月21日0時49分)
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