立山黒部アルペンルート「日本最後」トロリーバスが廃止へ 電気バスに転換



立山黒部貫光は12月11日、立山黒部アルペンルート(長野県・富山県)で運行している無軌条電車(トロリーバス)を廃止し、電気バスに転換すると発表した。日本国内からトロリーバスが消滅する。

2024年シーズンを最後に廃止される立山トンネルのトロリーバス。【撮影:草町義和】

廃止されるのは立山黒部アルペンルートの乗り物のうち、富山県内の室堂~大観峰3.7km(立山トンネル)を走るトロリーバス。立山黒部貫光は11月30日付けで、室堂~大観峰の鉄道事業の廃止を国土交通省の北陸信越運輸局に届け出た。

廃止予定日は来年2024年12月1日。実際に電気バスに変わるのは2025年シーズンからになる。立山黒部貫光は2024年シーズンをトロリーバスの「ラストイヤー」と位置付け、記念イベントなどを実施する方針だ。

立山黒部貫光によると、立山トンネルのトロリーバス車両は更新期を迎えている。今回の車両更新に際しては、高地での安定走行性に加え、今後の技術革新が見込まれる分野であることなどから、電気バスへの転換を計画したという。

同社は「(立山黒部アルペンルートは)国立公園事業であることから、環境省の手続きを踏みながら、サステナブルな事業運営やカーボンニュートラルの実現を目指し、引き続き、環境負荷の軽減などに留意してまいります」としている。

トロリーバスは道路上の架線から供給される電気で走るバス。日本では法規上、軌道法に基づく路面電車か鉄道事業法に基づく鉄道として扱われている。かつては東京や大阪など、路面電車と同様に都市部の公共交通として運行されていた。レールを敷設する必要がなく建設費が安いなどの利点がある一方、架線がない場所は走れないなどの短所があり、都市部のトロリーバスは横浜市営トロリーバスが1972年に廃止されたのを最後に消滅した。

イランの首都テヘランのトロリーバス。道路上の架線から電気の供給を受ける。【撮影:草町義和】

立山黒部アルペンルートでは排出ガスによる環境破壊対策として、関西電力が1964年から扇沢~黒部ダム(関電トンネル)でトロリーバスの運行を開始。ディーゼルバスが運行されていた立山トンネルも観光客の増加による増便で排気ガスがトンネル内に滞留するようになったため、1996年からトロリーバスが運行されている。

関電トンネルで運行されていたトロリーバス。【撮影:草町義和】
立山トンネルを走るトロリーバス。【撮影:草町義和】

現在は蓄電池を搭載して走る電気バスの性能が向上したこともあり、関電トンネルは2019年から電気バスに転換。立山トンネルのトロリーバスが日本最後のトロリーバスになっていた。

《関連記事》
川崎市営交通80周年「イルミバス」運行 かつては市電・トロバス・地下鉄計画も
「黒部宇奈月キャニオンルート」鉄道法規上の扱いは? 一般開放に向け準備進む