遠州鉄道「再び値上げ」2022年に改定も経費増大、車両更新「次世代型」具体的検討へ



遠州鉄道(静岡県)は10月31日、国土交通省の中部運輸局長に鉄道事業旅客運賃の上限変更認可を申請した。認可された場合、来年2024年4月1日に運賃を値上げする。全体の改定率は11%。

遠州鉄道の鉄道線を走る列車。【画像:けんちゃん_さん/写真AC】

普通旅客運賃の改定率は9.7%。上限額は8kmまでの区間で一律20円値上げし、8.1km以上の区間は一律30円値上げする。初乗り(4.0kmまで)は現行140円のところ160円に。新浜松~西鹿島17.8kmは現行480円のところ510円に変わる。

定期旅客運賃の改定率は13.2%で、通勤が17.6%、通学は5.7%。上限額は大人1カ月の場合、通勤定期が900~2690円の値上げで、通学定期は30~900円の値上げになる。新浜松~西鹿島の場合、通勤が2260円値上げの2万2650円。通学は30円値上げの1万3770円だ。

2022年度の鉄道部門は1億5732万4000円の赤字。2024~2026年度(3年間平均)は現行運賃のままの場合で2億1208万3000円の赤字が見込まれるところ、申請通り運賃を改定した場合は赤字見込み額が4594万円に縮小される。

上限の範囲内で設定する実際の運賃額(実施運賃)について、遠州鉄道は「中部運輸局の認可が下りた時点で改めてお知らせいたします」としている。

普通旅客運賃の現行運賃と申請上限運賃の比較。【画像:遠州鉄道】

遠州鉄道は昨年2022年2月、消費税率の引き上げによるものを除き39年ぶりに運賃を値上げしており、わずか2年で再び値上げされる。

同社によると、2022年度は物価高や外注工事費の高騰に加え電気料金の急騰もあり経費が増大。運賃改定による事業収益の増加額を経費が大きく上回り、同年度の収支も赤字になった。ほかにも高架橋の耐震補強工事などの設備投資が今後も続くことや、人材確保や従業員の処遇改善が課題になっていることなどから、運賃改定を申請したという。

遠州鉄道は旅客運賃の上限変更認可申請にあわせ、今後の設備投資計画の概要も発表。1985年から使用開始した高架橋の耐震補強工事を引き続き進めるほか、駅のバリアフリー化や車両更新も実施する。

1985年に高架化された区間にある八幡駅。【撮影:草町義和】

このうち車両更新については「現有車両においては、基本的な構造設計が作られてから長い期間が経過しておりますので、今後は更なる安全確保と省エネルギー化のため、次世代型への変更も具体的に検討し、車両更新を進めてまいります」としている。

また、遠州鉄道の鉄道・バスに導入されているICカード「NicePass」(ナイスパス)は全国相互利用サービスに対応していないことから「国内外からの来訪者の利便性に課題」があるとし、クレジットカードなどによるタッチ決済を導入する考え。一部の路線バスから順次導入を進め、鉄道線では2024年度の導入を計画しているとしている。ほかにも「12カ月定期券」のサービスを2024年4月1日から新たに始めるなど、運賃・料金の多様化を図るという。

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