北越急行ほくほく線の値上げ「前倒し」へ 黒字時代の利益「十数年後に枯渇」



ほくほく線(新潟県)を運営する北越急行は7月4日、国土交通省の北陸信越運輸局長に鉄道旅客運賃の変更認可を申請した。認可された場合、北越急行は10月1日に運賃を値上げする。従来の計画より値上げ時期を5年前倒しする。

北越急行ほくほく線のまつだい駅。【撮影:草町義和】

改定率は全体で約16%。普通旅客運賃と通勤定期旅客運賃は20%だが、通学定期旅客運賃は沿線自治体からの要望や子育て支援の観点を踏まえて10%とした。

普通旅客運賃は、初乗りが現行170円のところ40円値上げの210円。六日町~十日町など16~18kmの区間は現行340円のところ60円値上げの400円になる。六日町~犀潟の全線59.5kmは220円値上げの1310円。

普通旅客運賃の現行額と申請額。【画像:北越急行】

定期旅客運賃は1カ月の場合、16~18kmで通勤が2400円値上げの1万4440円に。通学は640円値上げの7020円になる。

通勤定期旅客運賃(1カ月)の現行額と申請額。【画像:北越急行】
通学定期旅客運賃(1カ月)の現行額と申請額。【画像:北越急行】

このほか、北越急行は利用者サービスの向上策として、70歳以上の高齢者や自動車運転免許返納者向けの乗車券を発売する計画だ。団体運賃も割引率を変更。普通団体は通期10%割引を1期10%、2期15%割引に変更し、学生団体は無賃割引を廃止する一方、20%割引を学生50%・児童30%・教職員30%割引に変更する。

北越急行の2022年度の収支実績は9億3495万9000円の赤字で、2023年度は8億9171万8000円の赤字の見込み。2024~2026年度の3年間合計では、現行運賃のままなら25億2575万4000円の赤字の見込みだが、運賃を値上げすれば赤字額は23億2434万5000円に縮小される見込みだ。

ほくほく線は新潟県南部の山岳地帯を横断する鉄道路線。列車は上越線と信越本線に乗り入れて上越新幹線の越後湯沢駅と上越市内の直江津駅を結んでいる。新潟県などが出資する第三セクターの北越急行の路線として1997年に開業。当初は越後湯沢駅と北陸方面を短絡する上越新幹線連絡の在来線特急「はくたか」も運行されており、その通過収入で黒字経営が続いた。

北越急行ほくほく線を走る特急「はくたか」。2015年に廃止された。【撮影:草町義和】

2015年には北陸新幹線の金沢延伸開業で特急「はくたか」が廃止され、収入が大幅に減少。北越急行は開業当初から北陸新幹線の金沢延伸による特急廃止と赤字化に備えて利益の一部を積み立てており、2015年以降は設備のスリム化など経費削減を行いつつ、積立金で赤字を穴埋めしている。

しかし、沿線の人口流出や少子高齢化に伴う就労・就学需要の減少、車両・設備の老朽化による維持管理費の増加に加え、近年はコロナ禍による収入減少や動力費などの高騰による経費増加もあり、厳しい経営が続いている。北越急行によると、積立金は20年以上先の2044年に枯渇する見込みだったが、現状のまま推移すると十数年後には枯渇するという。

ほくほく線の運賃は当初、JRの幹線運賃レベルで全国のほかの第三セクター鉄道に比べ大幅に低い水準だった。2014年に策定された北陸新幹線金沢延伸開業後の経営計画では、2018年・2028年・2038年に各10%の値上げを実施し、全国のほかの第三セクター鉄道と同じレベルにする計画だった。

2018年の値上げは計画通りに実施され、次の値上げ時期は5年後の2028年の予定だった。北越急行によると、この計画を大幅に上回る利用者の減少や車両・設備の老朽化もあり、改定時期を前倒しすることにしたという。

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