小樽で保存の北海道ED75・ED76「解体決定」経緯を説明 ED75は次善策検討か



小樽市総合博物館で保存されている電気機関車の解体が決まったことについて、同館は6月9日、解体を決定するまでの経緯や今後の考えなどを説明する文書を公表した。

小樽市総合博物館で保存されているED75 501。【画像:DAJF/wikimedia.org/CC BY-SA 3.0】

文書によると、解体されるのはED75形500番台(ED75 501)とED76形500番台(ED76 509)の合計2両。JR北海道が昨年2022年6月、この2両の変圧器などにポリ塩化ビフェニル(PCB)が使われている可能性があることを連絡してきたことから、同館は専門家を交えて処理の方法や手順などを検討した。

完全な形での保存は難しく、PCBが使われている機器類を取り出して車体や運転席のみ保存するなどの次善策も検討。しかし、変圧器のほかにもコンデンサーの一部などPCBの含有部品が1両につき数百点あるとみられた。

このため、すべての部品を取り出したうえで調査・分析を行い、完全にPCB処理を完了させる必要があり、総合博物館は作業内容や作業環境などを「総合的に判断」して解体を決めた。解体後の調査でPCBなどの問題がなければ資料として保存する考えだが、調査結果次第では保存できない可能性もあるという。

小樽市総合博物館で保存されているED76 509。【画像:100yen/wikimedia.org/CC BY-SA 3.0】

ED75形500番台とED76形500番台は国鉄時代の1960年代、北海道の国鉄線としては実質初となる電化が函館本線・小樽~旭川で計画されたのに伴い、北海道向けとして開発された交流用電気機関車。まず1966年に試作機としてED75形500番台のED75 501が製造されたが電気上の障害などから量産されず、改良型となるED76形500番台が1968年から1969年にかけ22両製造された。

ED75 501は国鉄分割民営化前の1986年に廃車。ED76形500番台は一部が1987年に発足したJR北海道に引き継がれたが1994年までに改造車の550番台を除き全廃され、550番台も2001年に廃車された。ED75 501とED76 509は小樽市総合博物館で静態保存されているがPCBの含有が判明したことを受け、小樽市は本年度2023年度一般会計補正予算案に電気機関車の撤去・解体などの費用として3900万円を計上した。

北海道初の国鉄電気機関車となったED75 501は準鉄道記念物に指定されている。総合博物館はED75 501について「JR北海道と現状について情報を共有しております」としており、次善策を同社と共同で検討する可能性を示唆している。

PCBは油状の人工化学物質。不燃性や電気絶縁性が高いなどの特徴があり、電気機器の絶縁油など幅広い分野で利用されていた。しかし動物や人への悪影響があり、慢性的に摂取すると吹出物などの皮膚症状や全身の倦怠感、しびれ感、食欲不振などを引き起こす。

日本では1960年代、食用油の製造過程でPCBなどが混入し、西日本を中心とした地域で大規模な健康被害を引き起こした「カネミ油症事件」が発生。1972年に行政指導によりPCBの製造・使用が中止され、1975年には製造・輸入が禁止された。

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