2020年3月14日「JRダイヤ改正」どう変わる 「新型特急」「新駅」「9年ぶり再開」など



JRは例年3月にダイヤ改正を行うことが多い。今年2020年も、3月14日にダイヤ改正が行われる。ダイヤ改正にあわせた新線の開業はないが、注目ポイントの 比較的 多い改正といえる。

新型車両のE261系。ダイヤ改正で営業運転を開始する特急「サフィール踊り子」で運用される。【画像:TKK5200/PIXTA】

新型コロナウイルスの感染拡大で関連イベントの中止が相次いで発表されているが、ダイヤ改正自体は予定通り行われる見通しだ(2月29日時点)。おもな改正ポイントをまとめた。

■東海道新幹線「N700A」統一、「のぞみ」平均所要時間が2時間半切る

東海道新幹線の列車はN700Aに統一される。【画像:ポニー/写真AC】

東海道新幹線はダイヤ改正直前の3月8日限りで700系電車が引退。車両はN700系の改良タイプ(N700A)に統一される。

これに伴い、東京~新大阪間の平均所要時間がいまより4分短い2時間29分になる。最速列車の所要時間はいままで通り2時間22分。1時間あたりの最大運転本数はいまより2本多い12本になる。

■東京~博多間の直通「のぞみ」も平均5時間切り

東海道・山陽新幹線の直通「のぞみ」も所要時間が短くなり、すべて5時間以内に。平均所要時間は4時間59分になる。

■東京~伊豆の特急「サフィール踊り子」運転開始、E261系デビュー

在来線特急でとくに大きく変わるのが、東京と伊豆方面を結ぶ特急列車。新型特急車両のE261系電車を使用する特急「サフィール踊り子」が、東京・新宿~伊豆急下田間で運転を開始する。E261系は8両編成で全席グリーン車という豪華列車だ。

このうち1両は、JR東日本の車両として初めて横2列(1+1列)の座席を設けたプレミアムグリーン車。ほかに個室タイプのグリーン車2両と、横3列(1+2列)のグリーン車4両で構成される。残り1両は食堂車で、麺料理を楽しめる「ヌードルバー」になる。

■「スーパービュー踊り子」廃止、251系も引退へ

251系で運転されている特急「スーパービュー踊り子」。【撮影:草町義和】

一方、東京・池袋・新宿~伊豆急下田間の特急「スーパービュー踊り子」は、「サフィール踊り子」と入れ替わりで廃止される。

「スーパービュー踊り子」は1990年にデビューし、この列車専用の251系特急型電車が導入された。ハイデッカータイプ(一部2階建て)で運転台越しの前面展望席などが特徴。この車両も「スーパービュー踊り子」廃止にあわせて引退する見込みだ。

■「踊り子」JR化後の特急車両に、国鉄185系は引退間近

特急「踊り子」に導入されるE257系2000番台。【画像:JR東日本】

国鉄時代に製造された185系特急型電車で運転されている東京・新宿~伊豆急下田・修善寺間の特急「踊り子」には、E257系2000番台特急型電車が導入される。

この車両はE257系0番台として2001年にデビュー。中央本線の特急で使われていたが、同線に新型特急車両のE353系電車が導入されたことから、余剰となったE257系0番台をリニューアルして2000番台とし、老朽化した185系を置き換えることになった。

185系の特急「踊り子」。【撮影:草町義和】

今回の改正では一部の「踊り子」にE257系2000番台が導入されるが、そう遠くない将来にE257系2000番台に統一され、185系は引退するとみられる。

■常磐線が9年ぶり全線再開、特急も復活

E657系の特急「ひたち」。【撮影:草町義和】

2011年3月に発生した東日本大震災で大きな被害が発生し、さらに東京電力の福島第一原子力発電所が炉心溶融事故を引き起こした影響で復旧工事が滞った常磐線が、ダイヤ改正にあわせてようやく全線の運転を再開する。

運休期間は9年におよび、災害による運休期間としては戦後最長とみられる。

これに伴い、東京と仙台を常磐線経由で結ぶ特急列車も復活する。震災前の運転区間は上野~仙台間で列車名は「スーパーひたち」だったが、震災後に上野東京ラインの運転開始や常磐特急の再編があり、再開後の運転区間は品川・上野~仙台間に拡大。列車名も「ひたち」になる。車両も震災前の651系特急型電車から震災後に導入されたE657系特急型電車に変わる。品川~仙台間の所要時間は4時間40分だ。

■関空特急「はるか」に増結用の新型、全列車が9両編成に

特急「はるか」の増結用として製造された271系。【画像:ユウ/PIXTA】

関西国際空港(関空)のアクセス特急「はるか」は、1995年の運転開始時に導入された281系特急型電車の6両編成と3両編成を使用。列車は6両編成、もしくは3両編成を増結した9両編成で運転されている。

JR西日本は近年の関空の利用者増加に伴い、今回のダイヤ改正から「はるか」をすべて9両編成で運転することに。増結用の新型車両として271系特急型電車が製造された。

■「スーパー」特急列車が減少

JR北海道の「スーパーおおぞら」。【撮影:草町義和】

JR北海道の特急列車は列車名に変化が。「スーパー北斗」「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」が、それぞれ「北斗」「おおぞら」「とかち」に変わり、「スーパー」が外される。

かつては新型車両を使用する特急の列車名に「スーパー」を付けることで、新型の導入をアピール。また、通過駅を増やして所要時間を短縮した特急にも「スーパー」を付け、停車駅の違いを案内していた面があった。しかし、新型車両の増備で従来車両が淘汰(とうた)されるなどして、「スーパー」付きと「スーパー」なしの列車の違いが明確ではなくなったこともあり、近年は「スーパー」を外した特急が増えている。

ダイヤ改正後も残る「スーパー」付きの特急は「スーパーいなば」「スーパーおき」「スーパーはくと」「スーパーまつかぜ」で、いずれもJR西日本の特急列車だ。

■中央線快速と中央・総武緩行線が「完全分離」

東京駅を発着する中央線の快速列車。【撮影:草町義和】

東京エリアの通勤路線は、長らく続いてきた中央線快速と中央・総武線の各駅停車(中央・総武緩行線)の「例外」がなくなり、運行区間が分かりやすくなる。

中央線の快速列車は現在、東京駅から神田駅、御茶ノ水駅、四ツ谷駅、新宿駅に停車し、それ以外の駅は通過。その代わりに中央線と総武線を直通する中央・総武緩行線の列車が御茶ノ水~新宿間の各駅に停車している。

しかし、早朝と深夜は東京駅を発着する中央線の快速列車が御茶ノ水~新宿間の各駅に停車し、中央・総武緩行線の列車は総武線内のみの運行になっている。

中央・総武緩行線の列車。【撮影:草町義和】

ホームドアの設置計画に伴い、ダイヤ改正後は東京駅を発着する中央線の列車が終日快速運転を行い、中央・総武緩行線は終日両線を直通運転。早朝・深夜の例外的な運行形態が消滅し、両線の列車の運行が完全に分離する。

■高輪ゲートウェイ駅が開業、田町~品川の再開発が本格化

工事中の高輪ゲートウェイ駅。【ponpokopon/写真AC】

JR東日本は田町~品川間の新駅「高輪ゲートウェイ駅」をダイヤ改正にあわせて開業する。山手線の列車が停車する駅としては、1971年に開業した西日暮里駅以来、49年ぶりの新駅だ。

駅間距離は、田町~高輪ゲートウェイ間が1.3km、高輪ゲートウェイ~品川間が0.9km。東海道線の列車は停車せず、山手線・京浜東北線の列車のみ停車する。今回は暫定開業という位置づけで、本格開業は駅周辺の再開発エリアの街開きが行われる2024年の予定だ。

田町~品川間にはJR東日本の車両基地が設けられているが、上野東京ラインの整備により東海道線と宇都宮・高崎・常磐線の直通運転が可能になった。そのため、東海道線の車両は宇都宮・高崎・常磐線方面の車両基地にも留置できるようになり、田町~品川間の車両基地は留置スペースに余裕ができた。

そこで田町~品川間の車両基地を縮小し、空いた土地を再開発することに。高輪ゲートウェイ駅も、再開発の一環として計画された。

■新千歳空港アクセス列車「エアポート」増発

新千歳空港アクセス列車の快速「エアポート」。【撮影:草町義和】

JR北海道は新千歳空港アクセス列車の快速「エアポート」を増発する。現在は116本だが、ダイヤ改正で32本増えて148本に。9~19時台の札幌~新千歳空港間の1時間あたり運転本数は、いまより1本多い5本になる。

また、朝の新千歳空港行き2本と夜の新千歳空港発2本は途中停車駅を新札幌駅と南千歳駅の2駅に絞った「特別快速」として運転。所要時間も快速より5分ほど短い33~35分になる。

■北海道と九州の普通列車に新型気動車

JR北海道のH100形。【画像:もりみと/PIXTA】
JR九州のYC1系。【画像:JR九州】

JR北海道は、函館本線・長万部~倶知安~小樽間に新型車両のH100形気動車を導入。JR九州も、長崎本線の諫早~長崎間や佐世保線の早岐~佐世保間、大村線に新型車両のYC1系気動車を導入する。

いずれもディーゼル発電機で発生した電力を使ってモーターを回す方式。YC1系は回生ブレーキにより発生した電力も走行時のアシストに使う。

■松山駅の貨物駅が移転「松山貨物駅」に

JR貨物の松山貨物駅。【画像:JR貨物】

JR貨物は四国の松山駅付近連続立体交差事業(高架化)に伴い、現在の松山駅にある貨物駅施設を予讃線の北伊予~伊予横田間に移転(営業距離上は現在の北伊予駅と同じ地点)。駅名も「松山貨物駅」に変わる。

新しい松山貨物駅は、コンテナ車を最大13両まで取り扱うことができるホームを設置。新しい貨物上屋も設置される。これにより駅構内でウィングボディタイプのトラックによる持込・取卸作業が可能になり、「積替ステーション」としても利用できるという。高速道路を利用した愛媛県南部からのアクセスも改善される。

なお、松山貨物駅にはJR四国の車両基地(松山運転所)と旅客駅(南伊予駅)の整備も行われており、南伊予駅は今回のダイヤ改正にあわせて開業する。

■ その他のおもな改正内容

●東北・北海道新幹線
・東京~新青森間で「はやぶさ」増発

●上越新幹線
・上野~高崎間で「たにがわ」増発
・2階建て車のE4系電車で運転されている「MAXとき」「MAXたにがわ」の一部をE2系電車に変更して列車名を「とき」「たにがわ」に変更

●北陸新幹線
・定期列車の運転本数を2019年台風19号被災前と同じ本数に戻す

●東海道・山陽新幹線
・「こだま」の指定席号車と自由席号車の構成を変更

●山陽・九州新幹線
・新大阪~鹿児島中央間で「みずほ」増発

●JR北海道
・「スーパーおおぞら」(ダイヤ改正後は「おおぞら」)の一部にキハ261系特急型気動車の増備車両を導入
・根室本線の古瀬駅と釧網本線の南弟子屈駅が廃止

●JR東日本
・磐越西線の郡山~会津若松間で一部座席を指定席にした快速「あいづ」運転
・羽越本線と信越本線、米坂線、磐越西線の新潟エリアを中心とした区間で新型車両のGV-E400系を追加投入
・常磐線のJビレッジ駅が臨時駅から本設駅に昇格
・常磐線の佐貫駅を「龍ケ崎市駅」に改称
・千葉~河口湖間で特急「富士回遊」を増発
・東京→青梅間で特急「おうめ」増発
・成田空港アクセス特急「成田エクスプレス」で編成増強(6両→12両編成)

●JR東海
・名古屋→高山間の特急「(ワイドビュー)ひだ15号」の名古屋発時刻を45分繰り上げ
・東海道本線の袋井~磐田間に御厨駅が開業。袋井~御厨間4.6km、御厨~磐田間3.2km
・参宮線の池の浦シーサイド駅(臨時駅)が廃止

●JR西日本
・北陸方面の特急「サンダーバード」「能登かかり火」の停車駅や時刻を一部変更
・紀勢方面の特急「くろしお」全列車が阪和線の日根野駅に停車
・福知山線(JR宝塚線)の運行形態を変更、昼間の「丹波路快速」「快速」は宝塚~新三田・篠山口間が各駅停車の「区間快速」に。普通列車は宝塚折り返しに。
・平日10~17時台のJR難波~高田間直通運転を廃止
・広島エリアで土曜・休日の快速「シティライナー」の運転再開

●JR四国
・岡山駅で新幹線「のぞみ」と四国方面への列車の接続時間を短縮
・特急「南風」全列車が宇多津駅に停車
・予讃線の北伊予~伊予横田間に「南伊予駅」が開業。北伊予~南伊予間1.6km、南伊予~伊予横田間1.1km

●JR九州
・新型車両の821系電車を鹿児島本線・門司港~荒木間に追加導入
・現在は毎日運転の特急「かわせみ やませみ」が特定日のみの運転に変更

●JR貨物
・関東~関西間をコンテナ列車を九州まで延伸
・東海~九州間で自動部品輸送を開始
・関東~四国間に31フィートの大型コンテナ輸送ルートを設定
・日本で唯一の存在になっていた関東の石炭貨物輸送列車を廃止