広島スカイレール代替バス「急行便」設定 国内唯一システム、廃止後の施設の扱いは?



広島市安芸区内にあるニュータウンのアクセス交通「広島短距離交通瀬野線(スカイレール)」が来年2023年12月に廃止される。運営会社のスカイレールサービスは1年後の廃止に向け、代替バスや廃止後の施設の取り扱いについて検討を進めている。

2023年末に廃止されるスカイレール。【撮影:草町義和】

スカイレールはみどり口~みどり中央の1.3kmを結ぶ懸垂式の軌道交通。起点のみどり口駅はJR山陽本線の瀬野駅に隣接し、途中のみどり中街駅と終点のみどり中央駅は近隣の丘陵部に造成されたニュータウン「スカイレールタウンみどり坂」内にある。ニュータウンを開発した積水ハウスなどが出資するスカイレールサービスが運営している。

今年2022年12月26日までに分かったスカイレールサービスの方針によると、代替バスは2023年11月から同社が運行。電気バスを使用し、平日は上下計150本を運行する。現在のスカイレール(平日で上下計174本)より減少する見込みだ。スカイレールの駅は起終点を含め3駅だが、その5倍以上となる16カ所にバス停留所を設けて利便性を高める。

スカイレールの所要時間は全線で5分程度。代替バスはこれより伸びるとみられる。朝ラッシュ時には、みどり中央駅から瀬野駅まで8分ほどで結ぶ急行便を設定して速達性の確保を目指す。

代替バスが乗り入れる瀬野駅の北口ロータリーは、朝夕の通勤通学時間帯を中心に送迎のための自家用車や近隣の中学校に通う生徒などで混雑している。このため代替バスの定時性や安全性の低下を懸念する声がある。スカイレールサービスは対策として駅前広場の改修などを行う考えで、その費用は同社が負担する方針だ。

スカイレールは法令上、路面電車を対象にした軌道法に基づく公共交通で、軌道を構成する支柱や桁は道路施設の扱い。このため広島市が道路管理者として施設を保有しており、日常的な維持修繕は広島市との協定に基づきスカイレールサービスが行っている。スカイレールサービスは自社の責任において施設を撤去する方針だが、駅舎は「住民利便施設」として再利用することを検討しているという。

広島市は代替バスについて「運行状況を注視していきたい。仮に適正な運行が行われなくなるなど利便性が大きく損なわれることがあれば、バス路線の維持という観点で本市が関与して必要な対策を求めていきたい」としている。廃止後の施設は地域住民の安全性に配慮した撤去が必要とし、今後スカイレールサービスと連携して対応していく考えだ。

当初見込みの3分の1以下、特殊システムも経営圧迫

スカイレールは1998年、スカイレールタウンのアクセス交通機関として開業。距離は短いが瀬野駅とスカイレールタウンの標高差が約160mもあることから、三菱重工業や神戸製鋼所が共同開発した急勾配・短距離用の軌道交通システム「スカイレール」を採用した。このシステムを採用しているのはスカイレールタウンのスカイレールだけで、国内唯一の営業路線だ。

スカイレールの位置。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

軌道は懸垂式モノレールのような支柱や桁で構成されるが、小型ゴンドラが地上駆動のロープで走行。駅構内はリニアモーターで走る。急勾配や急カーブに対応できるほか、同じ急勾配向け交通システムのロープウェイに比べ強風下でも運行しやすいなどの利点があるとされる。

スカイレールサービスは開業当初、1日に約5000人が利用すると見込んでいた。しかしスカイレールタウン内の駅が少ないうえにスカイレールタウンと瀬野駅がさほど離れていないこともあり、実際の1日平均の利用者数は2020年度で約1300人。コロナ禍の影響が小さかった2019年度でも約1600人で、当初見込みの3分の1以下と低迷している。

これに加えて特殊な軌道交通システムを採用したことから初期投資と維持管理費がかさみ、経営を圧迫。営業赤字は2019年度が約9980万円で、コロナ禍の2020年度は約1億2251万円に膨れあがった。以前はニュータウンの土地区画整理組合が拠出した運行負担金を取り崩して営業赤字を埋めていたが、2018年度に枯渇。こうしたこともあってスカイレールサービスは2022年11月、スカイレールの廃止とバス転換を決めた。

国土交通省の中国運輸局によると、2022年12月26日時点でスカイレールサービスから廃止許可の申請は出ていない。鉄道事業法では鉄道事業(旅客運送)を廃止する場合、原則として廃止予定日の1年以上前に国土交通大臣に届け出なければならないと定めている。一方、軌道法に基づく軌道を廃止する場合は国交相に廃止許可を申請して国交相の許可を受けなければ廃止できないが、許可を受ければ申請から1年以内でも廃止できる。

※追記(2022年12月26日17時28分):当初、営業赤字額に誤記がありました。おわびして訂正いたいます。

《関連記事》
山陽本線と広島大学結ぶ「BRT」導入可能性を検討 JR西日本・広大・東広島市が連携
広島市中心部の公共交通「共同経営」認可 路面電車・バスの均一運賃エリアを拡大統合