南海電鉄「値上げ」申請、来年10月から 初乗り180円、観光列車は「新造特急」に



南海電鉄は10月28日、鉄道旅客運賃の上限変更認可を国土交通大臣に申請した。認可された場合、来年2023年10月に値上げする。同社が運賃を値上げするのは、消費税率の改定に伴うものを除くと1995年9月以来28年ぶり。

南海高野線の特急「こうや」。【画像:たろとれ/写真AC】

全体の改定率は10%で普通運賃が9%、通勤定期が12.3%、通学定期が4.5%。定期運賃の割引率は通勤で37%(現在は38.8%)に引き下げる一方、通学定期は80.2%(現在の79.1%)に引き上げる。

普通旅客運賃の場合、初乗り運賃(3kmまで)はいまより20円高い180円に。4~15kmは各距離帯で30円値上げし、16km以降は各距離帯で40円値上げする。定期旅客運賃は1カ月で10kmの場合、通勤が1510円値上げの1万2030円。通学は250円値上げの4770円。

このほか、難波~中百舌鳥に特定運賃を設定して認可後に届け出る予定。現在の運賃は340円で申請運賃をそのまま適用すると30円値上げの370円だが、特定運賃は350円で値上げ幅を10円に抑える。空港線加算運賃とりんくうタウン~関西空港の特定運賃、鋼索線運賃、特別急行料金、座席指定料金、特別車両料金、定期特別急行料金、定期座席指定料金は変更しない計画だ。

普通旅客運賃の現行額と申請額。【画像:南海電鉄】

南海電鉄によると、同社の輸送人員は1983年度の3億2000万人をピークに1980年代後半から減少傾向。これに加えて2020年度以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響も受けて大幅に減少した。

2021年度の輸送人員は1億8000人でピーク時から4割以上の減少。運賃収入も1996年度の665億円から2021年度には379億円と4割以上減少した。営業損益は94億円の赤字で、2021年度も60億円の赤字と2期連続の赤字となった。

同社は今後もコロナ禍による行動変容や沿線の生産年齢人口の減少が相まって、鉄道の利用者数はコロナ前のレベルへの回復は見込めないと想定。このため運賃の値上げを決めたという。

同社は2023年度から2026年度まで年間100~130億円の設備投資を行う計画。線路を高架化して踏切解消を図る連続立体交差事業の推進やホームドアの設置、線路施設の耐震補強工事、通勤車両の新造・更新などを進める。

また、2025年度をめどに高野線に「新造観光特急車両」を23億円かけて導入する計画。「高野山へのアクセス手段としてだけでなく、『乗車すること』自体を目的化していただけるサービスの提供を追及」するとしている。

南海高野線の観光列車「天空」(左)。【画像:なりきんや/写真AC】

南海電鉄は今年2022年9月に公表した株主・投資家向け資料で、高野線の観光列車「天空」車両の老朽化を背景に新しい観光列車の導入を検討していることを明らかに。「天空」と同様に既存車両の改造するのか、それとも車両を新造するのか明確にしていなかったが、今回の値上げ申請の発表で高野線の観光特急用として新造する方針を明確に打ち出した。

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